検査の基準値・正常値のまとめ

【アルカリフォスファターゼの基準値・正常値のまとめ】

検査ぶっく♪ではアルカリフォスファターゼの酵素反応、胆管がん・骨疾患(骨型)の可能性について入門者向きに解説しております。

◆アルカリフォスファターゼの基準値・正常値のまとめ

アルカリフォスファターゼとは、略称「ALP」と呼ばれる骨の主成分で「リン酸化合物」を分解する働きをもつ「酵素」のひとつです。

ALPはどこにある?

アルカリフォスファターゼは、
●腎臓
●胎盤
●肝臓
●骨芽細胞
●小腸
に多く存在し、これらの臓器などに異常を発症した場合にアルカリフォスファターゼは血中内に漏れ出てきます。

この血中内に漏れ出てきたALPの血中濃度を測定する血液検査がALP検査となります。

血液検査でALPの測定が行われる主なケースとしては肝臓系疾患や肝機能の状態の確認、またALPは多くの臓器や器官にあるため、疾患の有無のチェックや健康状態の確認をする目的で検査が行われるケースが大半です。

今回は、ALP検査の検査数値の見方、そして検査結果からどのような事が解るのか。更に妊娠後期など数値が上がりやすい特殊的な状況に関する豆知識や検査結果から疑われる疾患の可能性について確認していきましょう。

目次

◆リン酸化合物分解酵素ALPとACP

アルカリフォスファターゼはエネルギー代謝の際に使用されるリン酸化合物を分解する分解酵素のひとつ。

ALP(Alkaline Phosphatase)の文字からもわかるようにこの分解酵素はアルカリ性の状態であるときに最も活発に機能する酵素です。

同様にリン酸化合物の分解酵素としては酸性フォスファターゼ(ACP)がありますが、こちらは血液が酸性に傾いている時に活発に活動します。

尚、ALPが最も活発に活動するのはpH10近辺のアルカリ状態の時です。

※アルカリフォスファターゼはアルカリ性pH10ラインで活発に活動する

◆少し変わった特徴。血液型で基準範囲が異なる?

ALPは少し変わった特徴をもつ成分です。

まず性別によって基準範囲が異なること。

これはそれほど大きな特徴ではありませんが男性よりも女性の方が高い数値を示します。(但し妊娠中は異なる)

次に「血液型」によって大きく基準値の範囲が異なることもALP数値のひとつの特徴であるといえます。

統計的に「B型」「O型」の血液型の人はALP数値が高いことが確認されております。

血液型で基準範囲が異なるのはちょっと不思議な気がしますよね。

◆ALPは多くの臓器に含まれている

ALPは酵素反応によって、幾つかのカテゴリーに分類されます。

この分類カテゴリーは一般的な医学用語で「アイソザイム」と呼ばれておりますが、この分類型を問わずその大半は「骨型」もしくは「肝型(肝臓・胆道)」に分類されます。

アルカリホスファターゼはあらゆる臓器に含有している成分であることから、アイソザイムを分類することで障害が発症している部位を調べることが出来るのです。

多くの臓器に存在しているという事は、様々な臓器の検査に有効な指標となる事も意味します。

~ポイントのまとめ~
★臓器がダメージを受けるとALPが漏れ出てくる
★アルカリ性で活発に活動する
★B型・O型の血液型の人はALP数値が高い
★ALP検査は全身の臓器の指標として有能な検査

◆肝臓系の疾患を特定する

アルカリフォスファターゼ血液検査が行われるケースについて見ていきましょう。

ALP血液検査を行う目的は、主に肝臓系の疾患を特定するようなケースです。

アルカリフォスファターゼは主に「胆汁中」に排出される特徴があり、肝機能に何らかの障害を発症すると数値が急速に上昇します。

※肝機能・肝臓組織に異常があるとALP数値はただちに上昇する

もし肝機能障害を発症しているかどうか?のチェックを行う場合は、まずALP数値をチェックする事で肝機能障害の可能性をチェックできます。

肝臓以外の臓器にもALPは存在しますが、特に肝臓疾患の発症を突き止める際にALP検査が特に友好な指標となります。

ALP血液検査の目的【画像】

では、続いて検査結果が正常値から外れてしまっている場合に考えられる疾患の可能性や、他の疾患との関連性、また臓器の特定などを分類する酵素反応による分類について確認していきましょう。

◆ALP検査で疑われる主な肝臓疾患一覧

肝臓系疾患の可能性を検討する際にALP検査は非常に有効な検査となります。

これは、「肝臓」及び「胆道」などに異常が発症している場合は検査数値が上昇するためでしたね。

ではALP血液検査で可能性が検討される肝臓系の疾患にはどのような疾患があるのでしょうか?

以下は、ALP血液検査によって障害の発症の可能性や細胞組織の異常などが確認される主な肝臓疾患です。

【ALP検査で疑われる主な肝臓疾患一覧】
●胆管がん
●肝臓がん
●肝硬変
●慢性肝炎
●胆管結石

◆肝機能検査の代表はAST・ALT・γGTP

ALP検査で肝機能障害の可能性が検討された場合は、どのような肝機能障害を発症しているのかを確認していくことになります。

肝臓の状態を確認する検査には幾つかの検査がありますが、その代表定期な検査はAST・ALT・γGTPの3種です。

AST・ALTとは以前はGOT=グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼとGPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)と呼ばれていた検査項目で主に肝炎系の疾患を確認する際の重要な指標となります。

γ-GTPも同様に「肝臓の状態を示す指標」でこれらの検査結果を総合して肝臓の障害のレベルをチェックしていくのが通常です。

ALP血液検査では代謝異常の要因を酵素反応によるアイソザイム区分から推測することができますが、肝機能障害を特定するにはやはり複数の検査を併用する必要があるのですね。

※肝機能障害の特定では複数の検査を実施し見極めていく

◆酵素反応による分類

アルカリフォスファターゼと酵素反応の仕組みについて見ていきましょう

ALP検査で異常が確認された場合、アイソザイムを分析することである程度の範囲で障害が発症している臓器を推測することが可能となります。

アイソザイムは大きく「6つのカテゴリー」に分類され、それぞれ「ALPI型」~「ALPⅥ型」で臓器の代謝異常なのか骨代謝の異常であるのかを確認します。

※アイソザイムがⅠ型~Ⅵ型のどの型に属するかを分析する事で障害を発症している臓器を推測できる

◆電子泳動法

酵素反応の確認では、臓器由来のアイソザイム酵素を「電子泳動法」と呼ばれる分類法によって分類し疑われる疾患の可能性を検討していきます。

アイソザイムには前項でもお話ししたとおり6種類の分類があり、それぞれ対象となる臓器や器官が異なります。

尚、ALP検査では大半のケースで肝臓の代謝に関わる肝型と、骨代謝に関わる骨型のアイソザイムを示す傾向にあります。

◆アイソザイムの分類表

以下は6種類のアイソザイムの分類です。

分類は「高分子型」「肝型」「骨型」「胎盤型」「小腸型」「免疫グロブリン結合型」に分類されます。

【アイソザイムの分類表】
アイソザイム分類型・タイプ
ALP1高分子型
ALP2肝型
ALP3骨型
ALP4胎盤型
ALP5小腸型
ALP6免疫グロブリン結合型

◆基準値表の読み方と注意点

アルカリフォスファターゼ検査値の一般的な正常値の範囲、基準値の範囲について見ていきましょう。

掲載する数値の範囲は、一般的なアルカリフォスファターゼ検査値の基準値の指標です。

仮に基準値内であっても、他の疾患の可能性がないという訳ではもちろんありません。

ALP血液検査では肝機能障害や肝臓疾患の可能性を確認できますが、病気の特定や疾患部位の特定に関しては、「γ-GTP検査」・「AST・ALT検査」など複数の肝臓系の血液検査を行いながら疾患を特定していくのが通常です。

尚、アルカリフォスファターゼ血液検査では、「血液中」のアルカリフォスファターゼ含有量を測定します。

検査の単位は(lU/l)です。

◆妊娠後期の妊婦は数値が極端に上昇する

ALP検査の結果をチェックする前に、まずALP数値の特徴をおさらいしておきましょう。

アルカリフォスファターゼはB型・O型の血液型の場合、数値がやや高い数値を示します。

また、男性よりも女性は平均的に数値が高くなります。

妊婦さんは特別

更に妊娠後期の妊婦に関しては胎盤からALPを排出するようになるため、血中濃度は極端に上昇する傾向にあります。

ですから妊娠後期の妊婦の場合は高い数値を示したとしても大きな心配は必要ありません。

近年は自宅で検査ができる郵送キットなどがありますが、これらを使用し検査結果が届いても慌てることのないようにしましょう。

尚、検査機関や病院で検査を行った場合でも、妊婦さんの場合は臓器のダメージによってALPが血中に漏れ出てきているかどうかを見極めることは困難です。

その為、より詳しいチェックとして他の検査を平行して行うことも多くなります。

◆アルカリフォスファターゼ(ALP)検査値の基準値一覧表

ここまでALPの特徴を幾つかお話ししてきましたが、これらの特徴を踏まえた上で下記表のチェックをしてみましょう。

尚、検査による基準値の範囲は臨床検査を行う施設や測定方法により異なります。

大きく逸脱して異なることはまずないと思いますが、検査後は担当の医師から説明があるのでしっかり聞いておきましょう。

【アルカリフォスファターゼ検査値の基準値表】
範囲単位(lU/l)
上昇が認められる範囲277以上
基準値の範囲102~276
低下が認められる範囲101以下

ALP検査で主に注視されるのは数値が減少した時の場合です。

ここからはALP検査の結果から疑われる健康状態や疾患の可能性について確認していきましょう。

◆ALPが不足するケース

血液検査の結果、アルカリフォスファターゼ検査値が基準値の範囲よりも低くなっている場合のケースについて見ていきましょう。

ALPは臓器に障害を起こすと血液中に漏れ出てくる成分です。

ですから血液内の濃度が高くなる際は注意が必要です。

ALP不足しっかり食べてますか?

もし基準値を下まわる低い数値までALPが低下してきているようなケースでは、ALPが生成されているかどうかについて確認していく必要があります。

特に栄養のバランスが崩れると十分にALPが生成されなくなる可能性もあるので注意が必要です。

◆無理なダイエット・食事制限は低下を招く

ALPが減少している場合に考えられる状態としては、まず栄養失調状態があげられます。

食事による栄養の摂取が足りていないために、十分に分解酵素が生成できないような状態でないかどうか?

例えば、過度なダイエットや食事制限を中心とした減量を行っている場合などに一時的に低い数値を示すことがあります。

この他に考えられる点としては自律神経系の疾患の可能性です。

自律神経のバランスの崩れによって正常な代謝が行われなくなっているケースなどでも数値が減少することもあるのです。

※無理なダイエット・食事制限を伴う減量中は低い数値を示すこともある

◆検査数値が基準値よりも低い場合に疑われる疾患

検査結果が基準値を下回っている場合は、可能性として以下の疾患の可能性を検討するケースがあります。

数値の低下の最たる原因は栄養失調が最大の要因であり、現実的に疾患によってアルカリフォスファターゼが減少するケースは非常に少ないと言えます。

検査数値が基準値よりも低い場合に疑われる疾患
●低アルカリフォスファターゼ血症
●甲状腺機能低下症
●栄養失調

低アルカリフォスファターゼ血症は10万人に一人程度の割合で発症すると言われる病気です。

可能性は非常に低いのですがゼロではありません。

数値の低下が見られる際は、基本的に栄養バランスが問題となっているケースが大半です。