血沈検査とは、血液中に含まれる「赤血球」の反応から様々な疾患を見分ける検査のことです。
赤血球は、肺で受け取った酸素を全身に運ぶ役割をもつ組織です。
また赤血球は、体内で発生した二酸化炭素を、肺に戻す役割も担っています。
これらの赤血球の働きは「ガス交換」と呼ばれ、生命の維持活動において赤血球は重大な働きをもっております。
血沈検査では、赤血球が沈降するスピード・速さを検査します。
血沈検査の正式名称は「赤血球沈降速度」という名称で、略して「血沈」・「赤沈」と呼ばれております。
血沈、及び赤沈ともに赤血球沈降速度の略称ですが、現在では略称の方が一般的に知られております。
※赤血球が沈降するスピード=赤血球沈降速度(血沈・赤沈とも言う)
血沈検査が行われるケースについて見ていきましょう。
血沈検査(赤血球沈降速度検査)は、その名の通り「赤血球の沈降スピード」を測定することで赤血球の状態から疾患の可能性などを検討する検査です。
検査では、採取した血液をガラスの試験管に入れ「抗凝固薬」を加えて「1時間当たりに沈降した距離」をミリ単位で測定していきます。
これらの沈降速度は、血液の凝固作用をもつ
★フィブリノーゲン
★アルブミン・グロブリン
などの蛋白質組織の影響を受けて沈降速度が変化します。
また、これらの蛋白質組織の他にも、
☆赤血球と血漿の比重
☆ヘマトクリット(赤血球割合)
によっても沈降速度は変化します。
血沈検査では、赤血球組織は様々な疾患に対して反応します。
ですから現実的に沈降速度の測定のみで疾患を特定することはできません。
しかし、赤血球の状態から「炎症の進行具合」などを把握することが可能です。
ですから、血沈検査は「炎症反応のスクリーニング検査」として、おおまかな疾患の可能性を検討する指標を求めるために血沈検査が実施されます。
血沈検査の一般的な正常値の範囲、基準値の範囲について見ていきましょう。
ここで掲載する数値の範囲は、一般的な赤血球沈降速度の基準値の指標であり、仮に基準値内であっても、疾患の可能性や症状の可能性がないという訳ではありません。
尚、血沈検査では、「血液中」の赤血球の沈降速度を測定し、「亢進」や「遅延」を確認し疾患や症状の可能性を検討していきます。
【血沈検査の一般的な正常値・基準値の範囲表】 | ||
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単位(mm/1H) | 男性 | 女性 |
著明亢進が認められる範囲 | 100以上 | |
高度亢進が認められる範囲 | 50以上 | |
かなり亢進が認められる範囲 | 30以上 | |
やや亢進が認められる範囲 | 11~29 | 16~29 |
一般的な基準値・正常値の範囲 | 01~10 | 02~15 |
遅延が認められる範囲 | 01未満 | 02未満 |
血沈検査の結果表では1時間当たりの沈降速度を、mm(ミリ単位)にて表示しております。
血液検査の結果、赤血球沈降速度の数値が基準値の範囲よりも亢進している場合。
※亢進=沈降速度が速くなること
このようなケースでは以下のような疾患の可能性が検討されます。
【検査値に亢進がみられる場合に検討される疾患】
☆白血病
☆心筋梗塞
☆肝硬変
☆感染症
☆悪性腫瘍
☆ネフローゼ症候群
☆貧血
尚、沈降速度が1時間当たり50ミリを超えるようなケースは「高度亢進」と呼ばれ、このような高度亢進が認められる炎症反応が高いと疑われるケースでは、「関節リウマチ」・「自己免疫性溶血性貧血」・「SLE」・「肺結核活動期」などの疾患の可能性が検討されます。
更に、沈降速度が1時間当たり100ミリを超えるようなケースは「著明亢進」と呼ばれ、このような著明亢進が認められるケースでは、「多発性骨髄腫」の可能性が検討されます。
亢進が認められるような炎症反応が高いケースでは「CRP検査」を行い炎症の度合いを更に検査していくの通常です。
CRP検査とは、炎症症状が発症すると、その症状に反応して血液中に現れる「C反応性タンパク質」の数値検査のことです。
血液検査の結果、赤血球沈降速度の数値が基準値の範囲よりも遅延している場合のケースについて見ていきましょう。
このように赤血球沈降速度の数値が基準値よりも遅延しているケースでは、「赤血球増加症」と呼ばれる疾患を発症する可能性が検討されます。
但しこれはあくまで可能性の範囲であり、遅延が確認された場合であっても血沈検査のみで疾患を特定することはもちろんできません。
尚、赤血球増加症の診断基準と検査項目について以下にまとめます。
赤血球増加症は多血症とも呼ばれる疾患で、
☆赤血球数 ⇒ 600万/CMM
☆ヘモグロビン濃度 ⇒ 18g/dl
☆ヘマトクリット値(赤血球割合) ⇒ 54%以上
の値を示す場合に認められる疾患のひとつです。
赤血球増加症は、
☆続発性赤血球増加症
☆真性赤血球増加症(真性多血症)
の2つの赤血球増加症に分類されます。
続発性赤血球増加症は酸素欠乏症や、エリスロポエチン産生腫瘍などに続発して発症する赤血球増加症のことです。
もうひとつの真性赤血球増加症は、赤血球の造血が正常の制御を受けずに無尽蔵に造血される現在のところは原因不明の疾患とされております。
遅延が確認された場合は、赤血球増加症に関する検査を合わせて行っていくことになります。