HBs抗原検査はB型肝炎ウィルスの感染の可能性を確認する為に行われる検査です。
検査は定性検査と呼ばれる検査を行い陽性・陰性の否かで現在の感染状況を確認する事が可能です。
B型肝炎は母子感染率が高く日本では血液製剤による感染問題も大きな問題となっております。
今現在まだ症状は発症していないもののウイルス感染者であるキャリアーの人数は今後増加していく可能性もあり、軽視できない重要な検査です。
今回は、HBs抗原血液検査の検査結果の見方、そして検査結果からどのような事が解るのか。更に検査結果から疑われる疾患の可能性、更にHBs抗原と合わせて覚えておきたい指標である「HBs抗体血液検査」の定性の見方について確認していきましょう。
目次
HBs抗原とは、「B型肝炎ウイルス(HBV)」の表面にある殻のようなもので、その殻を抗原と言います。
B型肝炎ウイルスは、ウイルスの核となる芯の外側を覆うようにHBs抗原に包まれる形で存在しております。
その為、B型肝炎への感染を確認する際には、その外側の殻に当たるHBs抗原の存在を確認します。
※HBs抗原=B型肝炎ウイルスの核を包み込んでいる膜
HBs抗原抗原検査では、抗原の有無の確認を行い、B型肝炎ウイルスに感染しているかどうかをチェックしていきます。
B型肝炎ウイルスは、以前は「母子感染」を中心とした感染症として認識されておりました。
しかし近年は、3回にわたる予防接種の効果もあり母子感染の確率は非常に低くなっております。
胎内感染に関しては、未だ確実に防止することはできていませんが、それでも尚、母子感染の可能性は非常に少なくなっております。
しかし、逆に性行動の多様化によって性感染による感染が急激に増加しております。
性感染による感染の場合は「急性肝炎」を発症する確率も高くなり注意が必要となります。
HBs抗原の検査で陽性反応を示し仮に感染していても、全ての感染者が肝炎などの症状を発症する訳ではありません。
B型肝炎への感染が認められた場合は、「キャリアー」と呼ばれるウイルスと共存する状態となります。
B型肝炎ウイルスの潜伏期間は平均すると60日~90日前後(2~3ケ月)程度です。
しかし、感染した際のウィルスの量や個体別の個人差があり、潜伏期間は短くて2週間程度、長い場合は半年近くになるケースもあります。
但し、30日以内に急性肝炎の症状をすぐに発症するようなケースは稀なケースです。
尚、免疫機能が低下している時などウイルスの働きが活発化した際には、私たちの体内の免疫細胞がウイルスを駆除しようと働きます。
この時に肝細胞はダメージを受け炎症を発症し肝炎を発症するようになります。
9割程度の多くのケースでは、肝炎ウイルスは体内の免疫細胞の働きで対抗できます。
しかし、急性肝炎が持続すると一部は慢性化し慢性肝炎へ、また急性肝炎の悪化から肝硬変へと進行していく可能性もある為、しっかりとした認識を持つことが重要となります。
~ポイントのまとめ~
★B型肝炎ウイルスの核を包み込む形でHBs抗原が存在する
★母子感染によるウイルス感染は減少したが性感染は増加している
★感染していてもすぐに肝炎を発症する訳ではない
HBs抗原血液検査が行われるケースについて見ていきましょう。
HBs抗原の血液検査では「B型肝炎ウイルス」が現在体内に存在しているかどうか?など感染の有無を確認する際に検査が実施されます。
検査では陽性反応・陰性反応で結果が示され、このような分類を「定性」と呼びます。
HBs抗原血液検査を行うとウイルスの活動が確認される場合は陽性の反応を示します。
これは現在B型肝炎ウイルスが体内に存在している状態であることを示し、この場合は合わせて抗体の有無を確認していくことになります。
B型肝炎ウイルスが現在体内に存在している場合の定性は必ず陽性反応を示します。
しかし現在ウイルスが確認されない場合は、仮に過去にB型肝炎の発症経験があったとしてもHBs抗原検査の定性は陰性反応を示します。
HBs抗原では、現在ウイルス状況を確認できる為、既感染者の「治療の予後を確認する検査」としても実施されることになります。
一度感染経験があったとしても治療によって完全にウイルス駆除が出来たならば、陰性反応を示すと言うことですね。
※HBs抗原検査では今現在のウイルスの存在をチェックできる
尚、B型肝炎ウイルスの感染が確認された場合は、合わせてほとんどの検査機関でC型肝炎ウイルス(HCV)の抗原も検査するのが通常です。
日本では肝炎の中でも「B型肝炎」「C型肝炎」のキャリアが非常に多い傾向が確認されております。
特に日本では血液製剤による感染問題なども大きな問題となっており、肝炎をまだ発症していないキャリアーの人口は更に増えてくる可能性もあります。
尚、キャリアーの方が肝炎を発症しても特に治療をせずに自己免疫力だけでウイルスを完全に駆除できてしまう方もいます。
この場合は、HBs抗体が陽性反応を示します。
~ポイントのまとめ~
★現在B型肝炎ウイルスが体内に存在しているかどうかを調べる
★陽性の場合は治療の予後の確認にも有効
★陽性の場合は念のためC型肝炎ウイルスの感染チェックも行う
HBs抗原検査値の定性と基準値の範囲について見ていきましょう。
以下で掲載する定性の範囲は、一般的なHBs抗原検査値の基準値の指標です。
HBs抗原検査の血液検査では、陽性反応、陰性反応で示される為、その定性によって感染の有無を確認します。
尚、HBs抗原と合わせて覚えておきたい指標としてHBs抗体血液検査の定性も覚えておくと便利です。
HBs抗体とは、B型肝炎ウイルスに感染した場合に、そのウイルスを駆除する為の免疫抗体のことです。
体内でウイルスの駆除を開始すると、肝炎などの炎症症状を発症し始めるようになります。
人体はウイルスや細菌を発見すると免疫細胞が活動します。
免疫細胞は初めて出会ったウイルスや細菌には最初はかなり苦戦します。
その為、比較的長期間炎症が継続したりします。
しかし、免疫細胞は戦いながらも相手の情報を記憶していく為一度戦った相手に次回であった場合は短時間で退治できるように成ります。
B型肝炎ウイルスもやはり人体にとっては異物であり駆除する対象です。
ですから、人体はB型肝炎ウイルスに対抗する免疫細胞であるHBs抗体を作りだし体内に温存しておきます。
HBs抗体がもし陽性反応となった場合は、過去に一度でもウイルスと戦った経験があることを指します。
現在は予防接種になどによってこのHBs抗体を獲得するケースが大半です。
【HBs抗原・抗体の定性チェック一覧表】 | |||
---|---|---|---|
No | 状態 | HBs抗原の定性 | HBs抗体の定性 |
① | 現在も過去にも感染なし | 陰性 | 陰性 |
② | 現在ウイルスはないが過去に感染経験有 | 陰性 | 陽性 |
③ | 感染しており活動は高レベル | 陽性 | 陰性 |
④ | 免疫ができた状態⇒②と同じですね | 陰性 | 陽性 |
血液検査の結果、HBs抗原が陽性反応を示した場合。
このようなケースでは、
●HBVキャリア
●急性B型肝炎
●慢性B型肝炎
である可能性、及び肝炎ウイルスの感染の可能性が検討されます。
HBs抗原が陽性反応を示すケースでは今現在B型肝炎ウイルスが体内で活動している状態です。
ですから、今現在どのような状態であるのかについてチェックしていくことが重要です。
陽性反応を示している場合は、既に何らかの肝臓系疾患や肝機能障害を発症している可能性も検討されます。
B型肝炎は、治療をせずに放っておくと「肝硬変」に進展して行く可能性が高い疾患です。
また肝硬変を放置していくとやがては「肝臓がん」へ進展して行く可能性もあります。
また、B型肝炎は慢性化しやすい疾患でもあり、慢性肝炎となった場合には肝硬変や肝臓がんの発生リスクも更に上昇します。
その為、肝臓疾患の検査では複数の検査を同時進行で検査していくことが多くなります。
~ポイントのまとめ~
★陽性反応を示した場合は急性B型肝炎・慢性B型肝炎の可能性も検討する
★肝硬変・肝臓がんなどの肝臓疾患に進展する可能性もある
HBVとは(hepatitis B virus)の略称でB型肝炎ウィルスのことです。
B型肝炎ウィルスはC型肝炎ウィルスと共に感染力が比較的強いウィルスで、将来的に肝炎を発症する可能性がある人(キャリアー)も含めると感染者の数は膨大です。
もし母親がHB血液検査で陽性反応を示した場合は、新生児の90%以上は母子感染によってB型肝炎ウィルスの感染者となります。
※B型肝炎ウィルスは母子感染率が非常に高い
母親がもし陽性反応を示す場合は、前項で解説したとおりその母親から生まれてくる赤ちゃんは高い確立で母子感染をします。
しかし、現在では陽性反応が母親にあった場合は、分娩の直後の産まれてきたばかりの新生児にワクチンの摂取を行うようになったので過度な心配は一切必要ありません。
今後、ワクチン接種が完全に徹底された場合、母子感染はあっても肝炎の発生は激減し更に抗体を持った子供たちが増えてくるのでB型肝炎を発症してしまうウィルス感染者は徐々に減少していくことが理論上は明らかとなってきております。
※ワクチンの摂取によってB型肝炎を発症するウィルス感染者は減ってきている
しかし、これはあくまで理論上であり、ウィルスの変形や変異の可能性は考慮されて降りません。
~ポイントのまとめ~
★B型肝炎ウィルスは母子感染率が非常に高い
★ワクチンの摂取によってB型肝炎を発症するウィルス感染者は減ってきている
HBs抗原血液検査の抗原とは、ウイルスそのものの事を指します。
ですからHBsの場合はB型肝炎ウィルスが対象のウィルスとなりますね。
対して抗体とは、ウィルスが体内に侵入したことを感知すると、侵入したきたウィルスを排除しようと働く免疫機能の事を指します。
(※抗体=免疫細胞のこと)
この免疫機能の働きによる、様々なウィルスが進入してきても体はある程度ウィルスと戦うことができるのです。
血液検査では、この免疫機能の働きを利用し、
「血液内に抗原がないかどうか?」
「抗体がないかどうか?」
をチェックしております。
血液検査の結果、HBs抗体が陽性反応を示した場合は、過去にB型肝炎に感染してことを意味します。
B型肝炎ウィルスに感染すると、感染した抗原は抗体との戦いがはじまり、炎症を発症します。
この抗原と抗体の戦いの際に生じる炎症が「肝炎」の原因です。
進入してきた抗原が強ければ強いほど、多ければ多いほど抗体の働きは活性化し同時に発生する炎症も大きくなり症状も重くなります。
しかし、この炎症の働きは免疫細胞が体を守る為に戦っている合図でもあるので重要な事象でもあるのです。
尚一度、B型肝炎と戦った免疫抗体は次回に同様のウィルスが来ても負けないように成長し細胞内に残ります。
その為、数年経過したとしても抗体が陽性反応を示すため、過去にB型感染に感染していたことを確認することが出来るのですね。
※HBs抗体が陽性の場合は過去の感染を示している
一過性肝炎とは、ウィルスの進入によってウィルスの駆除を行う抗体が登場。
この戦いの際に炎症が一時的に発症することによって発症する肝炎のことです。
自然治癒力、免疫能力の働きによって一時的に細胞内で激しい戦いが行われる為に発症する炎症である為「一過性」と名づけられております。
※一過性肝炎(急性肝炎)=抗原と抗体の働きで生じる肝臓器官の炎症症状
~ポイントのまとめ~
★抗体とは免疫細胞のことを指す
★HBs抗体が陽性の場合は過去にB型ウィルス抗原と抗体が争った証であり感染経験があることを示している
★一過性肝炎(急性肝炎)とは抗原と抗体の働きで生じる肝臓器官の炎症症状をもたらす疾患のことである