ケトン体尿検査は、主に体内のケトン体濃度を測定する事で血糖値のコントロールができているかどうかの確認をする目的で検査が実施されます。
その為、血糖値のコントロールが重要な糖尿病疾患では定期的に実施される検査項目の一つです。
今回は、ケトン体尿検査の検査数値の見方、そして検査結果からどのような事が解るのか。更に検査結果から疑われる疾患の可能性について確認していきましょう。
目次
ケトン体と言う言葉を日常生活で耳にすることはあまり無いかもしれません。
「ではこの成分はいったい何者なのでしょうか?」
まずケトン体と呼ばれる成分の正体について一から確認してみましょう。
医学的には以下の総称がケトン体として位置づけられております。
【ケトン体とは?】
●アセトン
●アセト酢酸
●β-ヒドロキシ酪酸
ケトン体は肝臓内で生成された脂肪酸から合成された成分です。
※ケトン体とは「アセトン」「アセト酢酸」「β-ヒドロキシ酪酸」の総称である。
しかし、このような説明では正直わかり辛いですね。
ケトン体尿検査を実施する場合は、ケトン体がどのような働きを持ち、人体にどのような影響を与え、またこの検査がどのような目的で実施され、るのかについて把握しておきたいものです。
では、ここからはケトン体は人体にとってどのような役割を持っているのか?どのように働きかける成分であるのか?についてひとつずつチェックしていきましょう。
ケトン体の役割について見てきましょう。
ケトン体の主な役割は生命の維持に欠かせない心臓や腎臓などの各種臓器のエネルギー源としての働きです。
心筋や肺の呼吸に関与する横隔膜などの筋肉は私たちが普段意識することなく活動している筋肉ですね。
このように意識をせずとも活動を継続し続ける筋肉を「不随意筋」と呼びます。
※不随意筋=無意識下においても活動する筋肉
人体の活動における主なエネルギー源はグルコース(ブドウ糖)と呼ばれる糖分です。
ケトン体はこのグルコースが何らかの障害や疾患で生成されなくなってくると、その代用エネルギー源として誕生します。
もしエネルギー源が完全に途絶えると活動が低下、もしくは停止する為、ケトン体は無くてはならない成分です。
また、ケトン体の役割は不随意筋だけでなく骨格筋などの随意筋のエネルギー源としての役割ももっております。
随意筋とは、意識して作動させる筋肉のことです。
※随意筋=意識下において活動する筋肉
腕の力こぶを作ろうとすると上腕を曲げますね。
この上腕の筋肉のように意識して動かす筋肉を随意筋と呼びますが、これらの筋肉のエネルギー源としてもケトン体は活躍します。
こうして見ると全ての生命活動において重要な役割を持っている事がわかりますね。
ケトン体が生成されるメカニズムについて見ていきましょう。
ケトン体は主に『体内の糖分(ブドウ糖)の不足』『糖代謝の異常』など血糖コントロールが正常に機能していない時に生成されます。
血糖を表す指標である血糖値の値が異常に低い数値を示すケースではエネルギー源としての糖分が不足します。
この時、肝臓では脂肪を分解し脂肪酸が生成されこの脂肪酸をエネルギー源として使用します。
この脂肪酸は一定量を超えてくると分解され新たに「アセトン」「アセト酢酸」「β-ヒドロキシ酪酸」を生み出します。
これらの成分がケトン体の正体です。
ケトン体は血液中濃度が一定量以上になると尿中のケトン体量も増加します。
※ケトン体=脂肪酸から合成されるエネルギー源
ケトン体尿検査が行われるケースについて見ていきましょう。
ケトン体尿検査は、主に
●糖尿病
●甲状腺機能亢進症
などの血糖コントロールの機能不全に関する疾患の可能性を確認する際にケトン体尿検査が実施されます。
前項でも解説したとおり体内のエネルギー源となる糖分が不足すると体内ではブドウ糖に変わるエネルギー源を作り出す必要があります。
この際に生み出されるエネルギーの源は肝臓で生成される脂肪酸でしたね。
脂肪酸はケトン体を合成し合成後は血液中に放出します。
血液中に放出されたケトン体は、心臓や腎臓の他、筋肉や臓器に運搬され使用後は腎臓を通じて体外へ排泄されます。
この働きを踏まえて尿中に存在するケトン体濃度を測定しケトン体量が増えすぎていないか?をチェックし血糖がコントロールできているかどうかの指標として利用しているのです。
糖尿病患者、特に糖尿病の重症患者の場合は「インスリン」の生成が体内で出来なくなります。
インスリンの生成ができなくなってしまうと体内ではブドウ糖をエネルギー源として使用することができなくなります。
その為、糖尿病患者の場合は、エネルギー源を補う為に肝臓で大量の脂肪酸が生成されます。
脂肪酸が増えるとケトン体の量も比例して増加するため糖尿病の場合は脂肪酸がエネルギー源の主力として使用されているかどうかを確認します。
もしケトン体尿検査の結果が陽性反応であれば、糖分が不足している証ですね。
糖尿病患者がケトン体検査を行う場合の目的はこのようなエネルギー源の生成という観点からチェックを行うケースです。
※インスリンが生成できない場合ケトン体数値は高くなる
体内の脂肪酸量が増加し、ケトン体の絶対量も増加してきた場合。
このようにケトン体が正常値を超えて上昇してくる状態をケトーシス(ケトン症)と呼びます。
ケトーシスはエネルギー代謝の影響を受ける為、様々な疾患の症状として発症する可能性のある症状のひとつです。
尚、アセトンはケトン体のひとつですが、エネルギー源として使用されることがない成分です。
またアセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸はどちらも血液を酸性に導く成分であり、この2つの成分が増加することをケトアシドーシスと呼びます。
~ポイントのまとめ~
★ケトン体は血糖のコントロール指標となる
★インスリンが生成できない場合ケトン体数値は高くなる
★ケトン体が増加した状態をケトーシスと呼ぶ
ケトン体尿検査の一般的な正常値の範囲、基準値の範囲について見ていきましょう。
以下に掲載する表は、ケトン体尿検査の基準指標です。
仮に定性反応が見られない場合であっても、糖尿病などの疾患の可能性や危険性がないという訳ではもちろんありません。
尚、ケトン体尿検査では、「尿中」のケトン体含有量を測定します。
これから検査を初めて受ける方の場合。
陰性であればOK!陽性なら問題あり!
とシンプルに覚えておけば良いでしょう。
ケトン体尿検査では、ケトン体含有量を試験紙を用いて測定します。
【ケトン体尿検査の定性判定一覧表】 | |
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範囲 | 定性 |
上昇が認められる場合の定性 | 陽性(+) |
基準値の範囲内の場合の定性 | 陰性(-) |
ケトン体尿検査では、その日の体調によって検査結果が変わってしまうこともあります。
最も多いケースとしては風邪などによって発熱を起こし脱水症状を起こしているケース。
脱水症状を起こしていると体内の血液成分濃度が濃くなる為、血液中のケトン体濃度も上昇します。
その結果、尿中のケトン体も比例して高くなり陽性反応が出てしまうケースがあるのです。
脱水症状を発症している場合では正しい定性を示すことができません。
検査当日に体調が悪い場合は後日へ変更してもらう。
突然検査を実施することに成った場合は、医師に自分の体調を前もって伝えておくことが大切ですね。
※脱水症状を起こしている場合の検査結果は信憑性が低い