LDHアイソザイム検査は主に慢性腎炎や慢性肝炎などの炎症性の障害、及び筋肉、皮膚組織の状態を確認する目的で検査が行われます。
LDHは人体内の各種臓器や筋肉細胞組織内に多く含有しておりLDH検査では、状態異常を示している部位を特定する指標となります。
今回は、LDHアイソザイム検査の検査数値の見方、そして検査結果からどのような事が解るのか。更に検査結果から疑われる疾患の可能性について確認していきましょう。
目次
LDHとは、全身の臓器に含まれる「酵素たんぱく」のひとつで「ブドウ糖」がエネルギーへ変換される際に欠かせない成分のひとつでもあります。
LDHは通常、全身各種の臓器や筋肉に多く含まれておりますが血液中にはほとんど存在することはありません。
しかし、体の中のどこかの臓器内の
●細胞壁の破壊
●細胞の壊死
などが発生すると血中にLDHが漏れ出します。
その為、LDHが血中から多く発見される場合は、臓器に何らかのトラブルが発生している信号と読み取ることができます。
尚、LDHは正式名称として
●乳酸脱水素酵素
と呼ばれており、LDHは乳酸脱水素酵素の略称です。
LDH血液検査が行われるケースについて見ていきましょう。
LDH血液検査は、主に
●肝硬変
●慢性肝炎
●急性肝炎
●肝臓がん(肝がん)
などの肝機能障害や
●心筋梗塞
●心不全
●心筋障害
などの心臓機能疾患の可能性、
●ネフローゼ症候群
●慢性腎炎
●腎不全
などの腎臓疾患の可能性、
●多発性筋炎
●進行性筋ジストロフィー
●皮膚筋炎
などの骨間筋障害の可能性などを確認する際に検査が実施されます。
LDH血液検査は全身の臓器や筋肉の状況を確認する検査です。
その為、幅広い疾患の可能性を検討できます。
通常LDH血液検査は他の検査と合わせて状況を確認していくため、部位の特定を検証する際などに有効な指標となります。
また、全身の臓器に影響を与える可能性を持つ「甲状腺機能低下症」や「膠原病」などの疾患の可能性を検討する際にもLDH血液検査は大切な指標となります。
以下は、LDH血液検査で調べられる主な疾患の一覧です。
【LDH血液検査で調べられる主な疾患一覧表】 | |||
---|---|---|---|
臓器の部位 | 可能性のある病気 | ||
肝機能障害 肝臓疾患 | 肝硬変 | ||
慢性肝炎 | |||
急性肝炎 | |||
肝臓がん(肝がん) | |||
心臓疾患 | 心筋梗塞 | ||
心不全 | |||
心筋障害 | |||
心臓がん | |||
腎機能障害 腎臓疾患 | ネフローゼ症候群 | ||
慢性腎炎 | |||
腎不全 | |||
腎臓がん | |||
骨間筋障害 | 多発性筋炎 | ||
進行性筋ジストロフィー | |||
皮膚筋炎 | |||
パーキンソン病 | |||
複数の臓器に関わる疾患 | 甲状腺機能低下症 | ||
膠原病 | |||
白血病 | |||
悪性腫瘍 | |||
悪性リンパ腫 |
LDH血液検査が肝臓や心臓疾患の可能性を検討する際に行われる理由は
●肝臓
●心臓
●筋肉
に特に多く含まれている為です。
尚、数値に異常が確認された場合、より詳しい検査として
●アイソザイム検査
が実施されるケースが多くあります。
LDH血液検査が行われ、更に正確な診断を行う際には「LDHアイソザイム検査」が実施されます。
アイソザイム検査では「分子構造」から、アイソザイムのタイプを判断し、どの臓器に疾患を発症しているかを確認します。
以下は、電気泳動法で分離された血清中のLDHアイソザイム活性に対応する分類する基準値の範囲です。
アイソザイムには以下の5つのタイプが存在し、それぞれ各臓器によってLDHアイソザイムが存在するタイプが異なる点が最大の特徴です。
【LDHアイソザイム分類の基準値の範囲表(電気泳動法)】 | ||
---|---|---|
アイソザイム分類 | 基準範囲(%) | 臓器・対象器官 |
LDH1 | 16.5~29.4 | 心臓・腎臓・赤血球 |
LDH2 | 30.7~41.4 | |
LDH3 | 20.1~28.5 | 肝臓・肺・骨格筋 |
LDH4 | 6.2~13.2 | 肝臓・甲状腺・骨格筋 |
LDH5 | 4.8~11.8 |
この特徴があることからアイソザイムのタイプを判断することで、どの臓器が異常を発症しているのかを検討しやすくなります。
但し、異常のある臓器の可能性は検討できますが、「疾患の種類」まで正確に判定する際には、更に異なる別の検査を併用して行う必要があります。
LDH検査値の一般的な正常値の範囲、基準値の範囲について見ていきましょう。
ここで掲載する数値の範囲は、一般的なLDH検査値の基準値の指標であり、仮に基準値内であっても、疾患の可能性や症状の可能性がないという訳ではありません。
尚、LDH血液検査では、「血液中」のLDH含有量を測定します。
【LDH血液検査検査値の基準値の範囲(PL法)】 | ||
---|---|---|
範囲 | 単位(IU/l) | |
要注意・危険性の高い範囲 | 780以上 | |
上昇が認められる範囲 | 490~780 | |
基準値の範囲 | 240~490 | |
低下が認められる範囲 | 240以下 |
※検査基準値の範囲は臨床検査を行う施設や測定方法により異なります。
血液検査の結果、LDH検査値が基準値の範囲よりも高くなっている場合。
このようなケースでは、LDH血液検査で調べられる主な疾患一覧表で解説した疾患を発症している可能性が検討されます。
尚、数値の上昇が著しいケースでは以下の疾患の可能性も検討されますので注意が必要です。
【著しく数値が高い場合に疑われる疾患】
●白血病
●悪性腫瘍
●悪性リンパ腫
●筋ジストロフェィー
●パーキンソン病
●心筋梗塞
血液検査の結果、LDH検査値が基準値の範囲よりも低くなっている場合のケースについて見ていきましょう。
このように検査値の数値が基準値よりも減少しているケースは、
●基本的に問題はない
と診断されるケースが大半です。
そもそもLDH(乳酸脱水素酵素)は基本的に血中にはほとんど存在しない成分である為、数値が低い場合は特に心配要因がない為です。
但し、乳酸脱水素酵素はエネルギー代謝の主役ですから「極端に数値が低い場合」に関しては一度担当医師に相談しましょう。
非常にまれなケースではありますが、先天的に乳酸脱水素酵素の量が少ない場合も確認されております。