LDLコレステロール検査は一般的に認識されている、いわゆる悪玉コレステロールの数値を測定する検査です。
悪玉コレストロールの測定が行われる主なケースとしては肥満症などのメタボリックシンドロームの数値の確認や、動脈硬化など血管組織の状態の確認をする目的で検査が行われるケースが大半です。
今回は、LDLコレステロール検査の検査数値の見方、そして検査結果からどのような事が解るのか。更に検査結果から疑われる疾患の可能性について確認していきましょう。
目次
LDLコレステロールとは、Low Density Lipoproteinの略称で血清リポたんぱくの主要分画の一つである
●低密度リポタンパク質
の事です。(別称悪玉コレステロールとも呼ばれる)
LDL(低密度リポタンパク質)は肝臓で生成された血液中のコレステロールを血管を通して運搬する働きを持っております。
コレステロールや中性脂肪などの成分は一般的に動脈硬化症の原因成分としての認識が強く、体に害を与える成分と思われがちです。
しかし、これらのコレステロール成分は人体の生命活動において欠かすことのできない重要な必須成分でもあります。
コレステロール成分は、適量が体内に存在している事が生命を維持する上で大切な条件となっております。
但し、基準範囲を超えてしまった場合に、動脈硬化症などの人体に害をもたらす要因となるケースがあるのも事実です。
尚、コレステロールも、中性脂肪も成分的な分類では「脂質」に分類されます。
中性脂肪は体を動かすエネルギー源として大切な役割を果たしております。
コレステロールは人体の細胞を形成する素材となるもので、含まれる成分によって幾つかのコレステロールに分類されます。
LDLコレステロールはこれらコレステロールの中の一種に過ぎません。
コレステロールは、人体の細胞組織の生成に大きく関与しております。
中でも「細胞膜」を生成する主要成分としてコレステロールは活躍しております。
人間の体は、約60兆個にも及ぶ細胞組織から構成されております。
これらの細胞組織のひとつひとつは「細胞膜」と呼ばれる薄い膜に覆われており、この細胞膜をつくる材料となっているのがコレステロールなのです。
また、この他にも丈夫な骨を形成するために不可欠とされる「ビタミンD」を生成する際の主要成分としてもコレステロールは活躍しております。
このように、人体の生命活動を維持するために重要な役割を持っているのがコレステロールなのです。
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)はHDLコレステロール(善玉コレステロール)と度々比較されますが、双方とも脂質を血漿中に安定させる働きを持つリポ蛋白であり、その血漿中の密度(比重)が異なります。
リポたんぱく質は密度(比重)が大きいほどリポタンパク質の割合が高くなり、逆に脂質の割合が低くなります。
【リポ蛋白の種類一覧】 | |||
---|---|---|---|
種類 | 略称 | 比重(g/ml) | |
カイロミクロン | chylomicron(略称なし) | 0.94未満 | |
超低密度リポタンパク質 | VLDL | 1.006未満 | |
中間密度リポタンパク質 | IDL | 1.006~1.019 | |
低密度リポタンパク質 | LDL | 1.019~1.063 | |
高密度リポタンパク質 | HDL | 1.063~1.21 |
LDLコレステロールは、血中量が増加すると「動脈硬化」の危険性を高める成分でもあり、別称『悪玉コレステロール』とも呼ばれている成分です。
コレステロールは毎日体内で生成されている成分ですが「食事」によって体外からもコレステロールは摂取されております。
その為、暴飲暴食などの過度な食生活を送っている場合、食事による体外からのコレステロールの摂取によっても『動脈硬化をはじめとする関連疾患』の発症の可能性が高まることになります。
~ポイントのまとめ~
★LDLコレステロールが増加すると動脈硬化を発症しやすくなる
★LDLコレステロールは体内生成と食事による摂取で増える
LDLコレステロール血液検査が行われるケースについて見ていきましょう。
LDLコレステロール血液検査は、主に以下に代表される疾患の可能性を確認する際に血液検査が実施されます。
【LDL検査によって確認される疾患の一覧】
●動脈硬化
●高コレステロール血症
●脂質異常症(高脂血症)
●糖尿病
●脳出血
●肥満症
中でも動脈硬化の可能性が検討される際はLDLコレステロールが高い数値を示す傾向にあることから、動脈硬化の要因検査として一般的にLDLコレステロール血液検査が行われております。
また「高コレステロール血症」・「脂質異常症(高脂血症)」も近年では特に注目視されている疾患であり、動脈硬化とともにLDLコレステロール数値が深く関与する病気として扱われております。
LDLコレステロール検査値の一般的な正常値の範囲、基準値の範囲について見ていきましょう。
ここで掲載する数値の範囲は、一般的なLDLコレステロール検査値の基準値の指標であり、仮に基準値内であっても疾患の可能性や症状の可能性がないという訳ではありません。
尚、LDLコレステロール血液検査では、「血液中」のLDLコレステロール含有量を測定します。
【LDLコレステロール検査値の基準値の範囲一覧表】 | |||
---|---|---|---|
範囲 | 単位(mg/dl) | ||
上昇が認められる範囲 | 135以上 | ||
基準値の範囲 | 60~134 | ||
低下が認められる範囲 | 59以下 |
※検査基準値の範囲は臨床検査を行う施設や測定方法により異なります。
LDLコレステロールは悪玉コレステロールとも呼ばれます。
対してLDLコレステロールは善玉コレステロールと呼ばれます。
この善玉・悪玉という相反する名称で呼ばれている原因はいったい何なのでしょうか?
この違いについて説明をする場合、各々の役割及び働きから見ていくとわかりやすいかもしれません。
まずLDLコレステロールの主な役割。
LDL(悪玉)は、血液内に入り込み全身にコレステロールをくまなく運搬することが役目です。
人間は生命を維持するために、1日だけでもおよそ700mgのコレステロールを必要とします。
その為、悪玉と呼ばれてはいますが「LDLの働きは必要不可欠」であることがわかります。
しかし、必要以上のコレステロールを運搬しすぎると、血管内にコレステロールが滞留し、アテロームを発症するなどの障害をもたらすことがあります。
これが悪玉と呼ばれてしまうこととなった所以です。
対してHDL(善玉)は、余分なコレステロールを回収する働きをもっております。
このような働き・作用の違いから善玉・悪玉という呼び名がつけられているのです。
LDLコレステロールは適切な量を保っている場合、決して悪玉と呼ばれるようなコレステロールではないのです。
LDLコレステロール血液検査を行う場合、大半のケースで中性脂肪数値の検査も同時に行われます。
これは、中性脂肪とLDLが共に動脈硬化などの危険因子と認められているためです。
中性脂肪検査もLDL検査も、血中内の滞留量を測定することで検査が可能ですから、一度の血液検査で双方の数値が確認できます。
中性脂肪は、皮下脂肪としてエネルギー源となる重要な脂肪です。
皮下脂肪は体温の保持という重要な働きもあることから、LDL同様、中性脂肪も必要不可欠な成分であることがわかります。
しかし、血液中の中性脂肪が過度に増えてくると、動脈硬化を促進させるという性質をもっております。
LDL同様に中性脂肪に関しても、適量以上となると人体に害をもたらす成分でもあるのです。
サラリーマンなどで40歳以上の方は毎年、特定検診と呼ばれる検査を受けることが義務付けられております。
40歳以上の方であれば、すでに特定検診を受けた事がある方も多いでしょう。
この特定検診はメタボ検診とも呼ばれるメタボリックシンドロームのチェックを行う検査です。
特定検診では血液検査が義務付けられており、受信者全員が受ける検査項目の中にLDLコレステロール検査も含まれております。
尚、健康診断・特定検診では、LDL検査に加えて
●中性脂肪(TG)
●HDLコレステロール(HDL)
の2つの血中量の測定も合わせて行うのが一般的です。
これら合計3つの総合した数値を
●総コレステロール(CT)
と呼びます。
会社の定期的な健康診断・特定検診などで血液検査を行った場合は、LDLコレステロールの検査数値を含めた複数の検査項目の結果が原則として郵送で送られてきます。
診断表をチェックする場合は、血液検査項目内の
●血中脂質検査
と記載されている項目をチェックしてみましょう。
血液検査の結果、LDLコレステロール検査値が基準値の範囲よりも高くなっている場合。
このようなケースでは、先ず
●脳梗塞
●心筋梗塞
などの動脈硬化を要因とする疾患の可能性を検討していく事になります。
LDLコレステロール検査結果の数値が正常値よりも高い場合に疑われる主な疾患としては以下のような疾患の可能性があげられます。
【基準値よりも高い場合に疑われる疾患の一覧】
●脳梗塞(動脈硬化)
●心筋梗塞(動脈硬化)
●高コレステロール血症
●脂質異常症(高脂血症)
●脳出血
●糖尿病
●肥満症
●胆道閉塞疾患
尚、LDLコレステロール数値が高いケース大半は、遺伝性などの特殊ケースを除き
●肥満
がひとつの要因となっているケースが多く確認されております。
その為、コレステロールのコントロールでは、運動不足を解消するための「運動療法」と「食事療法」によるコレステロール管理を行うことが重要であると言えます。
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また、近年ではこの他にも
●喫煙
●ストレス
などによってもLDLコレステロール数値が向上する事が確認されつつあります。
タバコのケースを見ると、「脳卒中の危険性を高めます」という文言が記載されております。
たばこが人体に悪影響を与えることは今では誰もが知っております。
また度々繰り返されるたばこ税の大幅な増税の影響もあり、喫煙者の母数が徐々に減少傾向にあることも確認されはじめております。
もし喫煙者であり、禁煙をしようか考えている方がいましたら喫煙とコレステロールの関についても把握しておくと禁煙の検討材料のひとつとなるかもしれません。
喫煙とコレストロールの関係は、「中性脂肪」の存在が大きく関与しております。
これは、たばこに含まれている
●ニコチン
と呼ばれる成分が中性脂肪の合成を促進させる働きをもっている為です。
中性脂肪は冠動脈疾患の危険因子となります。
また、中性脂肪は総コレステロールやLDLコレステロール数値を上昇させる働きをもっております。
ニコチンによって中性脂肪が増加し、中性脂肪によってコレステロールが増加する。
このようにして喫煙がコレステロールの増加に影響しているのです。
LDLコレステロール検査数値が高い方で喫煙者の方は、ニコチンが間接的にコレステロール値を高める要因となっている点を把握しておくことが大切です。
LDLコレステロールの血液検査が行われる場合、主力となって確認される疾患の一つに動脈硬化があります。
動脈硬化とは、その名の通り動脈に関与する疾患のことで
●動脈が弾力を失って固くなる
●動脈内の壁が厚くなり内腔が狭くなる
などの症状を発症します。
動脈硬化を発症する危険因子となりえる疾患や生活習慣病は現在ではかなり多くの要因が確認されております。
中でもLDLコレステロールなどのコレステロール群の関与が最大の危険因子となっていると考えられております。
LDLコレステロールの上昇は様々な疾患を発症する要因のひとつとなります。
中でも、LDLが大きく関与するとされる動脈硬化に関しては注意が必要です。
動脈硬化の最大の特徴は、自覚症状がほとんど見られないという点がポイントです。
動脈硬化が初期段階で確認される最っも多いケースは、健康診断などの検診時です。
動脈硬化によって発症リスクが高まる
●狭心症
●心筋梗塞
などの疾患を発症する前に動脈硬化の進行を自覚症状で把握することはできないのです。
LDLコレステロールは動脈硬化を促進させる要因でもありますから、もし検査で高値を示した場合は、これらの疾患についても再検査を実施することが重要となります。
コレステロールは動脈硬化の最大の危険因子と考えられている成分です。
中でもコレステロールによって発症する可能性が最も高い動脈硬化として
●粥状動脈硬化(じゅくじょうどうみゃくこうか)
と呼ばれる動脈硬化症があります。
この粥状動脈硬化とは、血管壁にコレステロールが蓄積するという危険な症状をともなうことが大きな特徴です。
血管壁に溜まったコレステロールは、血管内部の通り道が狭くなることから血流の流れを低下させる要因ともなります。
尚、この血管壁にコレステロールが蓄積した「こぶ」のことを
●アテローム(粥腫)
と呼びます。
形成されたアテロームは健康な状態である場合は血管に形成されることは基本的にありません。
動脈硬化の発症要因としてコレステロール値の高騰が大きく関与していることは様々な医療の研究によって今では証明されております。
また、コレステロール以外にも動脈硬化を引き起こす要因となるものは幾つも確認されております。
中でも生活習慣の片寄りなどによって生じる生活習慣病や、喫煙なども動脈硬化症の要員と考えられております。
【動脈硬化の発症要因として考えられるもの一覧】
●コレステロール
●高血圧
●糖尿病
●メタボリックシンドローム
●加齢
●運動不足
●喫煙
●過度の飲酒
●偏った食生活
この他、動脈硬化の発症に関しては、性別で見た場合、女性よりも男性の発症率が高いことも確認されております。
この性別による発症率の違いは、男性ホルモン・女性ホルモンの違いによるものです。
性ホルモンは男性も女性も双方のホルモンを分泌しております。
中でも女性ホルモンは、動脈硬化を抑制する働きを持っていることが確認されており、女性ホルモンを多く分泌する女性の方が発症率が低くなっているのです。
LDLコレステロール数値は、男性の場合20代から急速に数値が上昇する傾向にあります。
逆に女性は10代~30代にかけては統計的に数値が下がることも確認されております。
この性別によるLDLコレステロールの数値の違いに関しては幾つかの要因が考えられております。
まず、最大の可能性として考えられている要因は、女性ホルモンの関与です。
中でも現在最も注目を集めている女性ホルモンは
●エストロゲン
と呼ばれる女性ホルモンです。
エストロゲンは女性ホルモンの一種で、月経をコントロールする働きをもっております。
また現在確認されている作用としては
●LDLコレステロール値を抑制する
●HDLコレステロール値を高める
という作用をもっていることも確認されております。
LDLは悪玉、HDLは善玉と呼ばれることからもわかるように、このエストロゲンの働きはコレステロールを要因とする疾患の発症の可能性を低下させる働きをもっていることもわかります。
尚、女性ホルモンが活発に分泌され始める10代以降は、LDL数値が徐々に低下しはじめます。
しかし、30代半ば辺りになると、一転してLDL数値は徐々に上昇を始めます。
これはエストロゲンの分泌能力が徐々に低下し始めることが要因と考えられております。
LDLコレステロールの数値は統計的に女性は20代で低下しますが、男性は20代から徐々に数値の上昇が始まります。
この数値の上昇の最大の要因として考えられるのが「生活習慣の変化」によるものと考えられております。
男性は20代になると、仕事をする為に社会に出るようになります。
社会に出てまず大きく変化するのが毎日の生活のリズム・生活習慣の変化です。
残業が続くこともあれば、仕事後のお付き合いなどもスタートします。
また、今までは部活などで体を動かしていたスポーツマン系の方であっても、運動を行う時間さえも取れなくなってくるようなこともあります。
このように男性が一般的に社会に出始める年齢である20代は
●運動不足
●食事の偏り
などが起こってしまいLDLコレステロール値を上昇させる要因となっていると考えられております。