肺活量検査は肺の換気能力を調べるための検査です。
具体的には肺のガス交換の能力を確認し疾患の可能性を検討します。
肺活量検査で測定が行われる主なケースとしては気管支喘息などの呼吸器系疾患の状態の確認、また肺の組織の状態の確認をする目的で検査が行われるケースが大半です。
今回は、肺活量検査の検査数値の見方、そして検査結果からどのような事が解るのか。更に検査結果から疑われる疾患の可能性について確認していきましょう。
目次
肺の主な役割は「換気機能」と呼ばれるガス交換を行うことが肺の最大の役割です。
ガス交換という言葉はちょっと聞きなれない言葉ですよね。
このガス交換とは、一般的に私たちが使用している調理などに使用する「ガス」ではなく生理学では「酸素」と「二酸化炭素」の交換を行うことを指します。
肺は酸素の取り込みと二酸化炭素の排出を行う重要な器官です。
その為、肺の能力を示す数値を肺活量として定め、肺活量能力を測定することで様々な疾患の可能性の有無をチェックすることができるのです。
呼吸では、口や鼻から取り込まれた酸素が気管に送られます。
気管に取り込まれた空気は、左右の気管支へと枝分かれしそれぞれ右肺・左肺に分岐して肺の内部にある肺胞へ繋がります。
肺胞内では、呼吸によって取り入れられた酸素を血液中に取り込み、逆に血液中の二酸化炭素を肺胞へ排出します。
この一連の活動をガス交換と呼び、肺の主要な役割として位置づけられております。
肺活量は肺の内部で行われているガス交換の能力・機能の絶対値を測定する「能力値」として捕らえる事が可能です。
ですから肺活量が多い、少ないという基準は肺の換気能力の影響を大きく受けることになります。
肺活量が比較的多いとされるマラソン選手や水泳の長距離選手などは、この肺の換気能力が高いという証でもあるのですね。
また、もう少し厳密に見ていくと、実際に酸素と二酸化炭素のガス交換を行っている組織は、気管支の先にある「肺胞」や「肺胞嚢」と呼ばれる組織です。
ですから肺胞、肺胞嚢の機能が正常に機能している、もしくは優れているという証とも捕らえる事ができます。
~ポイントのまとめ~
★肺活量とは肺の換気能力を指す
★肺の最大の役割は血液のガス交換
★肺胞・肺胞嚢で酸素と二酸化炭素のガス交換が行われている
肺活量測定検査が行われるケースについて見ていきましょう。
肺活量測定検査は、「健康診断」や「体力測定」などでも行われる一般的な検査のひとつです。
健康診断の義務化が図られたことで、健康診断や特定検診などがきっかけではじめて肺活量の測定をおこなった方もいるかもしれません。
尚、肺活量測定検査が行われるケースとしては以下のような肺機能に関わる疾患の可能性が疑われるケースが大半です。
肺機能障害の可能性が疑われる疾患の一覧
●気管支ぜんそく
●肺機能疾患の可能性
●肺線維症の可能性
●肺気腫の可能性
肺機能と肺活量は肺の肝機能を示す重要な項目です。
肺の病気の可能性を確認や、疾患の治療中の予後の状態確認などの際にも検査が実施されます。
スポーツアスリートの場合は、肺の換気能力がパフォーマンスに影響を与えることも多いため肺活量を向上させることを目的としたトレーニングを実施することがあります。
肺のガス交換能力を測定することは持久力を必要とする競技においては重要な指標ともなる為です。
特に水泳アスリート(遠距離系)などは、肺活量を鍛えるトレーニングを実践します。
このトレーニングを行う目的も肺活量の向上が直接競技成績の向上に関与する可能性が目的のひとつにあげられます。
「体力をつける為に走り込みを行う!」
この体力という一言の中にも下半身の安定という要素や肺活量の向上という要素が含まれていると捕らえることもできますね。
肺活量測定検査の種類について見ていきましょう。
検査で行われる項目には幾つかの項目があり、それぞれの目的に沿った指標を用いることになります。
種類としては絶対数値を測定する努力性肺活量や1回換気量。
そして一般的な指標(予測肺活量)を元に比率を測定する%肺活量や努力性肺活量における秒単位の比率を測定する1秒率などの項目があります。
以下に肺活量測定検査で行われる測定の種類と指標をまとめておきますのでチェックしてみましょう。
【肺活量の測定の項目・種類一覧早見表】 | ||
---|---|---|
図番 | 測定項目 | 測定方法・内容の説明 |
① | 努力性肺活量 | 最大の速さで一気に吐き出せる量 |
② | 1回換気量 | 通常時(安静時)の呼吸の量 |
③ | %肺活量 | 予測肺活量と実測肺活量の比率 |
④ | 1秒率 | 努力性肺活量における1秒量の比率 |
⑤ | 1秒量 | 努力性肺活量における最初の1秒量 |
⑥ | 残気量 | 息を吐ききった後に肺に残っている酸素量 |
肺活量検査の具体的な測定方法について見ていきましょう。
経験のある方はご存知かと思いますが、一般的な肺活量の測定方法では、まず「スパイロメーター」と呼ばれる器具を使用して測定を行います。(スパイロ検査とも呼ばれます)
測定ではまず鼻をクリップで塞ぎます。
スパイロメーター測定器を使用する検査のわかりやすいイメージとしては鼻栓をしながらマウスピースを加えて測定しているイメージを思い浮かべると良いでしょう。
鼻をクリップで塞ぐことで息を吐き出す際に鼻から漏れ出てくる空気を防止し、より正確な数値の測定を行うことが可能となります。
クリップ装着後は「マウスピース」を加えて息を吐きこむというシンプルな手順で肺活量測定を行います。
マウスピースを使用した経験がある方は多くはないでしょう。
その為、マウスピースを用いて息を吐き出すことに慣れていないので1回の測定では正しい数値はおそらく出せません。
経験によって数値が異なっては正しい測定数値は求めることはできませんよね。
その為、肺活量測定では、より正確な数値を測定するために数回の練習をまず行います。
練習後は一時的に酸欠状態になることも多いので、安静状態に戻るまで時間をおき回復時間を取ります。
その後落ち着いた段階で測定を開始。ここで出てきた数値が肺活量の指標数値として使用されることになります。
※肺活量測定では数回の練習が必要
肺活量検査値の一般的な正常値の範囲、基準値の範囲について見ていきましょう。
ここで掲載する数値の範囲は、一般的な肺活量検査値の基準値の指標です。
仮に基準値内であっても、疾患の可能性がないという訳ではもちろんありません。
肺活量は基本的に肺活量が高すぎて問題になるようなことはありません。
但し、基準範囲を大きく下回るようなケースでは、何らかの疾患を発症している可能性を検討していく必要性が出てきます。
特に肺活量と呼ばれるように肺の機能を示す指標であることから、拘束性障害や閉塞性障害の可能性を見極めていくことが重要です。⇒基準値よりも低いケース(参照ページ)
肺活量測定検査において主な指標とされる、
★努力性肺活量(最大の速さで一気に吐き出せる量)
★%肺活量(予測肺活量と実測肺活量の比率)
★1秒率(努力性肺活量における1秒量の比率)
以上、3種類の検査項目の基準値・平均値の指標について目安となるラインを一覧表にまとめます。
以下の一覧表はあくまで検査基準値の一般的な指標です。
基準範囲は臨床検査を行う施設や医師の見解によっても若干異なります。
また測定方法や測定時の状況、その日の体調などによっても異なってくることがあるでしょう。
【肺活量検査値の基準値の範囲一覧表】 | |||
---|---|---|---|
範囲 | 努力性肺活量 | %肺活量 | 1秒率 |
基準値の範囲 | 成人男性3500ml 成人女性2300ml | 80%以上 | 70%以上 |
低下が認められる範囲 | 男性2500ml以下 女性1700ml以下 | 79%以下 | 69%以下 |