血液ガス検査は水素イオン濃度(pH)の数値から血液の属性を調べることが可能です。
また、血液ガス検査では、水素イオン濃度の他、酸素分圧検査(PaO2)、炭酸ガス分圧検査(PaCO2)、酸素飽和度検査(SaO2)を併せて行うのが基本です。
血液ガス検査で測定が行われる主なケースとしては呼吸器系疾患の状態の確認、また各種臓器の状態の確認をする目的で検査が行われるケースが大半です。
今回は、血液ガス検査の検査数値の見方、そして検査結果からどのような事が解るのか。更に検査結果から疑われる疾患の可能性について確認していきましょう。
目次
血液ガス分析検査とはいったいどのような検査なのでしょうか?
体循環、肺循環という言葉は学校の授業で学習したことがあるかもしれませんが、肺循環の過程で「ガス交換」が行われるということは覚えている方も多いかもしれません。
このガス交換とは主に酸素と二酸化炭素を肺で交換することですが、血液ガス分析においても血液中の酸素や二酸化炭素などの濃度や比率を分析する検査がこの血液ガス分析検査です。
血液ガス分析検査では酸素や二酸化炭素の分析の他、具体的には以下の成分比率などの分析を行います。
【血液ガス分析検査の測定項目】
☆水素イオン濃度(pH)
☆酸素分圧(PaO2)
☆炭酸ガス分圧(PaCO2)
☆酸素飽和度(SaO2)
などの数値を測定する検査です。
動脈血液に溶けているガスを分析することから「動脈血液ガス分析検査」とも呼ばれますが、一般的に血液ガス検査でとおっております。
この検査では肺胞と肺胞の表面に存在する「毛細血管」との間で「ガス交換」が正常に行われているかどうかを調べることが可能です。
ガス交換とは聞きなれない言葉かもしれませんが、
★呼吸によってとりいれた酸素を全身に送り出す
★全身で酸素が代謝された二酸化炭素を肺へ送り呼吸で体外へ排出する
といった人間の生命維持活動の基本となる働きがガス交換です。
酸素の摂取能力の低下や呼吸器系の障害を血液ガス分析検査によって発見できる可能性があります。
血液ガス分析検査が行われるケースについて見ていきましょう。
血液ガス分析検査は、主に「心不全」や「呼吸不全」などの気管支系疾患の可能性が検討される際に検査が行われるのが通常です。
また血液ガス分析を行うことで
☆代謝性アシドーシス
☆代謝性アルカローシス
☆呼吸性アシドーシス
☆呼吸系アルカローシス
などの識別を確認する際に検査が実施されます。
水素イオン濃度(pH)の数値では、血液の属性を確認することが可能でうす。
水素イオン濃度の測定結果から「酸性」・「アルカリ性」など血液の性質の偏りを確認することで「酸塩基平衡」に異常がないかどうかを調べることができます。
酸塩基平衡(さんえんきへいこう)とは酸性・アルカリ性のバランス状態を示す医学用語です。
血液ガス分析検査は臨床検査の中でも重要な指標となる検査であると言えます。
血液ガス分析検査の一般的な正常値の範囲、基準値の範囲について見ていきましょう。
ここで掲載する数値の範囲は、一般的な血液ガス分析検査の基準値の指標であり、仮に基準値内であっても、疾患の可能性や症状の可能性がないという訳ではありません。
尚、血液ガス分析検査では、「水素イオン濃度(pH)」・「酸素分圧(PaO2)」・「炭酸ガス分圧(PaCO2)」・「酸素飽和度(SaO2)」の4つの血液検査を一度に行うの基本です。
【血液ガス分析検査数値の基準値の範囲】 | ||
---|---|---|
検査項目 | 基準値の範囲 | |
水素イオン濃度(pH) | 7.35~7.45 | |
酸素分圧(PaO2) | 74.0~104.0 | |
炭酸ガス分圧(PaCO2) | 37.0~44.0 | |
酸素飽和度(SaO2) | 94%~97% |
※検査基準値の範囲は臨床検査を行う施設や測定方法により異なります。
血液検査の結果、水素イオン濃度phの数値が基準値の範囲よりも高くなっている場合。
このようなケースでは、「アルカレミア」と呼ばれる塩基血症と診断されます。
この場合、炭酸ガス分圧の数値と照らし合わし
☆代謝性アシドーシス
☆代謝性アルカローシス
☆呼吸性アシドーシス
☆呼吸系アルカローシス
の識別を検討していくことになります。
また血液検査の結果、炭酸ガス分圧PaCo2の数値が基準値の範囲よりも高くなっている場合は、上記のアルカローシス、アシドーシスに加えて
☆慢性閉塞性肺疾患
☆神経筋疾患による換気障害
☆腎不全
☆筋ジストロフィー
☆筋無力症候群
などの病気の症状を発症する可能性が検討されます。
血液検査の結果、水素イオン濃度phの数値が基準値の範囲よりも低くなっているケースについても見ていきましょう。
このようなケースでは、「アシデミア」と呼ばれる酸血症と診断されます。
血液の酸塩基平衡は主に「肺」及び「腎臓」の働きによって保たれておりますので、酸性に傾いている場合は、肺や腎臓に何らかの異常が発症している合図とも言えます。
この場合は、肺及び腎臓においてどの部位に問題が生じているのかを確認する為に再検査を行い病気の可能性を特定していくケースが大半です。
血液検査の結果、酸素分圧Pao2の数値が基準値の範囲よりも低くなっている場合は、「低酸素血症」の可能性を検討していきます。
低酸素血症では
★心不全
★呼吸不全
を引き起こす可能性も高まる為、更に踏み込んだ観察と検査を行い治療の検討を行います。