検査の基準値・正常値のまとめ

【テストステロン検査の基準値・正常値のまとめ】

検査ぶっく♪ではテストステロン血液検査の基準値・正常値の範囲および検査内容について入門者向きに解説しております。

◆テストステロン検査の基準値・正常値のまとめ♪

テストステロンは男性ホルモンの一種でテストステロン検査では、血中内のホルモン濃度を測定し体内の状況を把握する指標とします。

テストステロンは成長期など年齢によって変化し、更に日内変動もあるため、疾患の治療過程の確認など定期的な検査としても実行されます。

今回は、テストステロン検査の検査数値の見方、そして検査結果からどのような事が解るのか。更に検査結果から疑われる疾患の可能性について確認していきましょう。

目次

◆テストステロン(アンドロゲン)とは?

テストステロンとは、精巣、卵巣などの「生殖器」から分泌される男性ホルモン(アンドロゲン)と呼ばれる刺激ホルモンのひとつです。

テストステロンは男性ホルモンとも呼ばれる通り、主に男性が多く分泌する刺激ホルモンで、男性の場合は「睾丸」から大半のテストステロンが分泌されております。

テストステロンとは?

テストステロンは男性の特徴とも言える「ひげ」「体毛」の成長を促し、生殖器の発育にも大きな影響をもたらすホルモンです。

筋肉や皮膚、そして体毛は全てたんぱく質で構成されておりますが、このたんぱく質成分の合成を促す働きをもっているのがテストステロンなのです。

オリンピックなどのスポーツアスリート間で問題となる「蛋白同化ステロイド剤」として知られるステロイドホルモンもテストステロンが含まれております。

筋肉や骨格の形成に欠かせない成長ホルモンのひとつでもあります。

~ポイントのまとめ~
★テストステロンは男性ホルモンである
★テストステロンは男性の特徴を作り出す
★たんぱく質成分の合成を促進する

◆骨・筋肉の成長で男性らしい体へ

テストステロンの分泌は第二次性長期を迎えると急激に分泌慮が上昇しはじめます。

第二次成長期に入った男子の場合は特に多量のテストステロンが睾丸から分泌されるようになり、「骨格筋(筋肉)」の成長や筋肉質の体系への変化がはっきりと確認できるようになります。

この男性らしい体格への変化を促すホルモンがテストステロンなのです。

筋肉・骨の成長を促す男性ホルモン

骨格の変化としては男性は第2次成長期を境に肩幅が広くなり、逆三角形の体系に近づきます。

対して女性はエストロゲンなどの女性ホルモンの働きにより、骨盤が広く成長し正三角形に近い体系へと変化していきます。

このような筋肉や骨格そのものの成長にもホルモンの分泌は関連します。

一般的に男性の方が女性よりも体毛が濃い傾向にある点や、小さいころはなかったひげが、成長期に入ったとたんに男子だけ濃くなってくるのも性ホルモンの働きによるものなのです。

また、成長期の男子の特徴としては「声変わり」がありますが、この声変わりなどもやはり第二次性長期のひとつの特徴でテストステロンがやはり関与しております。

尚、テストステロンは生殖器の成長を調整するホルモンでもあり、この第二次性長期には「夢精」などをもたらす働きをもっております。

これらの夢精の発生や生殖機能の変化は大人としての準備段階に入った事を示しやはり第二次性長期に分泌量が増加します。

~ポイントのまとめ~
★第二次性長期に分泌量が増加
★男子は筋肉質の体系に変化
★声変わりや夢精も性ホルモンの影響

◆血液検査(測定)の目的

男性ホルモンであるテストステロンは、人体に様々な影響を与える性ホルモンです。

その為、障害や病気の発症、発育状態によってもホルモンの血中濃度が変化していきます。

ではここで実際にテストステロン血液検査が行われるケースについて見ていきましょう。

テストステロン血液検査が実施される場合は、主に以下のような障害の可能性や、症状の特定を行う際に検査が実施されます。

テストステロン血液検査の測定からわかる病気一覧
●男性更年期障害
●性機能不全
●自閉症
●多毛症
●前立腺がん
●認知症
●うつ病

また以下のように病気の特定ではなく定期的な確認検査やチェックなどを目的とした検査も実施されます。

定期検査など
●生殖機能の成長状態の確認
●不妊症治療患者の治療過程における定期検査
ドーピングの確認

◆テストステロンの日内変動

テストステロンの血中濃度は1日の中でも濃度が大きく変化します。

このように、1日の朝、昼、晩と血中濃度や分泌量が変化することを日内変動と呼びます。

男性ホルモンであるテストステロンの分泌に関しては日内変動がやや激しく日中の分泌量は極端に低下すること傾向が見られることが確認されております。

テストステロンの日内変動

その為、テストステロンの血液検査を行う際は、採血の際に変動の少ない早朝の時間帯に行うことが重要となります。

また定期的に数値の測定を行う必要性が求められる場合に関しては、比較検証の為にも毎回の測定をほぼ同一の時間帯で行うことが理想です。

男性更年期障害などによるホルモン補充療法の効果を測定する場合やがん治療による治療過程の確認の為の測定に関しても同様です。

ホルモンは脳にある視床下部や下垂体や松果体の他、甲状腺や副腎、膵臓そしてテストステロンが分泌される精巣や卵巣といった様々な部位や臓器などから分泌されます。

これらのホルモンは常時一定量が分泌されている訳ではないことからどのホルモンにおいても日内変動が見られる傾向にあります。

~ポイントのまとめ~
★テストステロンの日内変動は激しい
★血液検査などの測定検査では毎回同じ時間で測定することが重要
★ホルモンは様々な部位から分泌されている

◆血液検査・血液濃度の正常値

男性ホルモンであるテストステロン血液検査の検査値の一般的な正常値の範囲、基準値の範囲について見ていきましょう。

血液検査によるテストステロンの血中濃度を測定する際の血中濃度の単位は(ng/ml)です。

日内変動のある成長ホルモンですから測定する時間帯は出来る限り早朝がベストです。

日内変動のメカニズム

尚、ここで掲載する検査数値の範囲は、一般的なテストステロン検査値の基準値の指標です。

個人差の大きなホルモンでもある為、仮に基準値内であっても、疾患の可能性がないという訳ではもちろんありません。

また、検査基準値の範囲は臨床検査を行う施設や測定方法によっても異なるケースがあります。

尚、テストステロン血液検査では、「血液中」の遊離テストステロン濃度を測定します。

【男性のテストステロン検査値の基準値表】
範囲単位(ng/ml)
上昇が認められる範囲7.60以上
基準値の範囲2.00~7.60
低下が認められる範囲1.99以下

~ポイントのまとめ~
★男性のテストステロン検査値の基準値表をチェック
★上昇と低下の範囲を確認
★血液検査の単位は(ng/ml)

◆検査値が基準値より高いケース

血液検査の結果、テストステロン検査値が基準値の範囲よりも高くなっている場合。

このように検査値が高い数値を示すケースでは、幾つかのホルモン分泌に関わる疾患を発症している可能性が検討されます。

テストステロンの増加が確認された場合に疑われる疾患の可能性としては主に以下のような病気や症状があります。

検査値が高い場合に疑われる疾患の種類
●男性ホルモン産生腫瘍
●思春期早発症
●先天性副腎過形成
●精巣女性化症候群
●薬剤の副作用

特に女性の場合は、「男性化現象」をもたらす可能性が高く、「多毛症」「筋肉体質」などの変化を発症するケースも多く確認されております。

~ポイントのまとめ~
★検査値に増加が確認される場合は幾つかの疾患の可能性が検討される
★女性の場合は男性化現象も
★薬剤の副作用の可能性もある

◆テストステロン値の増加と攻撃性の関連性

テストステロンは性に対する積極性や行動力を高める効果があることが確認されている性ホルモンのひとつです。

男性の場合は、不妊治療などにおいても積極性の向上を促進する目的においてもテストステロンの投与を行うケースがあるほどです。

不妊治療のお薬-テストステロン

また、ホルモンは肉体の成長や筋肉や皮膚細胞の構成にも重要な役割を果たしておりますが、精神的、いわゆるメンタル面においても影響を与えることが確認されております。

特にテストステロンは「性欲の促進」という効果があらわれることが確認されている為、見方によってはその性欲の向上が攻撃性の高さに関連してくるように見えることがあるかもしれません。

これは攻撃性と積極性が関連する可能性をもつことと同じ考えです。

但し、医学的にテストステロンと攻撃性の関連性に関しては解明されている訳ではありません。

加齢に伴って分泌量が減少することによって「うつ病」などのメンタル的な疾患に関連する可能性があることも近年では確認されてきております。

しかし、やはりまだ明確な解明には至っていないのが実情なのです。

アメリカでは積極的に行われているホルモン剤の投与ですが日本ではまだ事例が少ない為、検証対象となる母数が少ない点も推測の範囲を出ない理由のひとつです。

~ポイントのまとめ~
★数値の増加と攻撃性(積極性)の増加は確かに関連する
★メンタル的な効果の明確な解明はできていない
★日本はホルモン投与による治療が遅れている

◆女性のテストステロン正常値

テストステロンは男性ホルモンとしてここまで解説してきましたが、女性の場合もテストステロンは体内で合成されております。

女性の体内でテストステロンが合成されている部位は男性の腫瘍部分が精巣(睾丸)であるのに対し、女性は卵巣と副腎です。

男性と比較すると女性のテストステロンホルモンの分泌量は低く平均的に男性の正常値範囲の10分の1~20分の1程度であることが確認されております。

女性の分泌量は男性の5~10%程度

骨(骨格)や筋肉の成長を促すホルモンでもあるテストステロンはやはり女性にとっても重要なホルモンであることは変わりないのですね。

尚、コレステロールを主原料とし、皮膚の張りなどをもたらすたんぱく質の利用効果を高める効果もあることからアンチエイジング療法においても女性のテストステロン数値の重要性が問われるようになってきました。

以下は女性の正常値の範囲と上昇、低下が見られる範囲の基準値を示した一覧表です。

【女性のテストステロン検査値の基準値表】
範囲単位(ng/ml)
上昇が認められる範囲0.80以上
基準値の範囲0.06~0.80
低下が認められる範囲0.05以下

~ポイントのまとめ~
★女性は卵巣と副腎でテストステロンを分泌
★分泌量は男性の10分の1程度
★女性のテストステロン検査値の基準値表

◆テストステロンが低値を示すケース

血液検査の結果、テストステロン検査値が基準値の範囲よりも低くなっている場合のケースについて見ていきましょう。

このように検査値の数値が基準値よりも減少しているケースは、まず性機能不全症である可能性が検討されます。

性機能不全症とは?

男性の場合、テストステロンの分泌量が低下すると「性交に伴う射精の低下」「精子含有数の低下」などの症状を発症するケースもあります。

これはテストステロンが性欲の促進をもたらす成分であることが影響していると考えられております。

今では広く認識されるようになりましたが、男性が不妊の原因であるケースはテストステロン数値が低下しているケースが大半です。

また、テストステロンの減少は一般的に言われる第二次性長期を迎えてもあきらかに成長期がなかなか訪れないとされる「思春期遅延症」「下垂体前葉機能低下症」などの症状を発症する可能性も検討されます。

尚、女性のテストステロン標準値は、基本的に男性よりも圧倒的に少ないので基準値を下回るケースでも過剰な心配は必要ありません。

但し、極端に数値が低下している場合は、一度医師へ相談してみましょう。

~ポイントのまとめ~
★低下が見られる⇒性機能不全症の可能性
★男性が不妊の原因の場合もある
★成長期が遅れる要因のひとつとしても考えられる

◆テストステロンの合成経路・代謝経路

テストステロンがどのように合成されるのか?その合成経路について見ていきましょう。

テストステロンはコレステロールたんぱく質から出発し幾つもの酵素の働きによって変化しその過程の中でテストステロンが合成されております。

コレステロールから合成

ですからコレステロールが不足するとテストステロンの低下をもたらす可能性がありコレステロールも重要な成分のひとつとなります。

合成経路は、コレステロール⇒プログネノロン⇒DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)⇒アンドロステンジオン⇒テストステロンという経路を辿ります。

分泌されたテストステロンの大半はその日の間に肝臓で代謝されますが、肝臓で全て代謝されるわけでなく、代謝されなかったホルモンは腎臓の濾過機能によって一部が体内に再吸収され残りは尿と共に体外へ排出されます。

ドーピング検査では、この尿中の遊離テストステロン濃度を測定し診断を下しているのですね。

~ポイントのまとめ~
★テストステロンの合成経路の出発はコレステロール
★分泌されたテストステロンの大半は肝臓で代謝
★尿中にもテストステロンは含まれる

◆筋力トレーニングによるテストステロン分泌量増加の可能性

筋力トレーニングを行うとテストステロン量が増加するというのは結論から言うと事実です。

実際にトレーニング直後の数値を測定するとその遊離テストステロン濃度の検査数値が平均値の数十倍の数値を示したとされる研究報告も多く発表されております。

トレーニングによる増加?

しかし、これがトレーニングに限定されるかどうかは疑問の残る範囲です。

筋力トレーニングは純粋に内容を捉えると筋細胞の破壊行動とも言えます。

この自身の肉体が損傷を受けているという行動に対する防衛反応として分泌量が増加している可能性も検討される為です。

テストステロンと同様のエンドルフィンやコルチゾールはストレスや痛みに耐える為に分泌されるホルモンです。

これらのホルモンの反応を参照するとテストステロンの分泌量の増大も何らかの行為に対する防衛反応の可能性があると考えることもできますね。

~ポイントのまとめ~
★結論は増加する!
★分泌量が増えるメカニズムは解明されていない
★防衛反応の可能性も検討される

◆テストステロンと脂肪代謝

テストステロンを増やすと脂肪の代謝が高まりダイエットにつながると言うのは本当でしょうか?

このダイエットに繋がるかどうかは別として、テストステロンの影響を受けて脂肪がつきにくい体質になる可能性があることは考えられる範囲です。

脂肪を燃焼させる為に必要な最も主力の人体組織は筋細胞が繊維状に集まる筋繊維であり筋肉です。

これは筋肉が運動エネルギーを発揮する際に脂肪が運動エネルギーの燃料として使用される為。

脂肪の燃焼を行う筋肉の発育を促すテストステロンの分泌量を増やすことが可能であれば、当然筋肉はつきやすくなり脂肪を燃やしやすい体質へ変化する可能性もあるのです。

米国では肥満治療やアンチエイジング治療のひとつの手段としてテストステロン補充療法が行われております。

この事からも肥満対策、ダイエット効果を目的としたテストステロン補充療法の効果が期待できることは間違いありません。

~ポイントのまとめ~
★脂肪がつきにくい体質になる可能性は考えられる
★脂肪を燃やすのは筋肉
★米国では肥満治療にテストステロン補充療法が適用されている

◆テストステロン受容体とは?

精巣や副腎などの内分泌腺から分泌されたテストステロンは、血液中に入り込む形で血流に乗って体内を巡ります。

この際に、テストステロンは細胞の受容体と結合を果たすことでようやく「ホルモン」としての活動を開始することができます。

細胞に受容体があることでテストステロンは細胞内にとどまることができ、酵素を活性化させることができるのですね。

酵素はエネルギー代謝や基礎代謝に必要な物質です。

この酵素の働きを通じてテストステロンの特徴である筋肉の成長や骨格の形成、性欲の亢進などの効果が発揮できているのですね。

細胞には様々な酵素と受容体が存在し、性ホルモンはこれらの受容体と結合し酵素を活性化させているのが酵素の活性化の仕組みです。

~ポイントのまとめ~
★細胞の受容体との結合で活動開始
★結合後にようやく酵素の活性化を果たす
★テストステロンは内分泌腺から血液中へ放出される