白血球は体内へ侵入してくる病原菌や細菌、ウイルスなどを駆除する免疫システムの代表成分です。
例えばウイルスが侵入してくると、ただちに現場におもむき最前線で戦いをはじめます。
ウイルスの勢力が強力であれば、体内で白血球は新たに生産され白血球の数を増大し戦ってくれます。
このように白血球は人体の維持に必要不可欠な存在であります。
WBC(白血球)検査では、この白血球の数値を測定し、体内の状態を確認する目的で実施されます。
今回は、WBC(白血球)検査の検査数値の見方、そして検査結果からどのような事が解り、更に検査結果からどのような疾患の可能性が検討されるのかについて確認していきましょう。
目次
白血球とは、免疫機能に大きく関与する血液成分のひとつです。
免疫機能とは人体内に何か異物などが確認された際にその異物を体内から追い出す、もしくは体内に侵入してきた異物に戦いを挑んでやっつけてしまう機能のことです。
白血球は主に人体に侵入してくる「微生物」や「細菌」、そして感染症の原因となる「ウイルス」などを退治する働きを持っている免疫細胞のひとつなのですね。
子供が風邪を引いてしまった時や、自分自身の体調が優れない時に、病院や近所のクリニックなどに行くと病院の医師に「免疫力が低下していますね」と言われた経験はありませんか?
この免疫力の低下とは、白血球などの免疫機能が低下している事を指しているのですね。
では、もし人体内に白血球などの免疫システムが全く無かったとしたらいったいどうなってしまうのでしょうか?
もし私たちの体の中に免疫システムが全く無くなってしまった場合は、普段の風邪のような微弱なウイルス性疾患などを発症しただけでも免疫機能がなければ「肺炎」になってしまったり大きな病気・疾患へすぐに進展しまうことになります。
スポーツ競技に例えるならば白血球はこの免疫システムのエース的存在。
しかもウイルスや細菌などと戦いながら相手の特徴も記憶していくという優れた学習能力を持つトップアスリートなのです。
※白血球は免疫システムの代表的存在!体内へ侵入してくるウイルスや細菌と戦いながら相手の特徴を学習し更に強固な免疫システムを構築していくとてもかしこい免疫細胞。
白血球は体内に細菌やウイルスなどの異物が侵入してくると、その異物をただちに感知し退治するための活動を開始します。
白血球の動き・働きは想像以上にとても迅速です。
異物をセンサーが完治すると、白血球はただちに異物の確保を行います。
更に相手がやや手ごわいと感じるとすぐに応援用の白血球を作り始め「白血球数を増加」させていきます。
尚、このウイルスや細菌類との戦いは完全に侵入者を倒すまでは戦いを辞めることはありません。
こうして免疫細胞システムは根気良く戦うことで異物として認識したウイルスや細菌を退治していくのです。
尚、逆に免疫機能が何らかの原因で低下すると白血球数値は減少し、感染症などにかかりやすくなってしまいます。
このように白血球は人体の防衛機能の主役であり、重要な働きをもっている組織です。
※白血球は相手が手強いと判断した場合は自らの細胞を増殖し数で勝負する!
風邪を引くと体が熱っぽくなりだるくなったり、時には全身の関節に痛みを生じるような症状を体感します。
「ではなぜ風邪をひくとこのような症状を発症するのでしょうか?」
この風邪などを発症したときの独特の症状に関しても実は免疫システムのエースである白血球が一役絡んでいます。
細菌やウイルスと、白血球細胞の戦いが始まると人体はその戦いにより強い「炎症」を発症します。
この炎症症状が風邪などの発熱の原因です。
戦いが激しくなればなるほど炎症は大きくなり、この炎症がおおきくなるほど体感的な症状はきつく感じられます。
ですから発熱は免疫細胞が頑張って戦ってくれている証でもあるのです。
体温が上がることは肉体的にはきついものですが、ウイルスが増殖しづらい環境をつくることにもつながり全ては人体の防衛反応から起きている現象のひとつなのですね。
~ポイントのまとめ~
★白血球は免疫システムのエース!代表的存在である
★相手が手強い場合は白血球数を増殖する!(重要)
★炎症・発熱は免疫システムが戦っている証拠
白血球数値の測定として血液検査が行われるケースについて見ていきましょう。
白血球の数値を測定する血液検査は、健康診断などの定期健診などのケースを除くと主に以下のような状態の可能性が検討される場合に検査が実施されます。
WBC(白血球)検査が実施される目的
●造血機能の働きの確認(造血機能の低下の可能性が検討される場合)
●免疫力の低下の可能性
●感染症の可能性
●慢性骨髄性白血病の可能性
なかでも造血機能をもつ「骨髄」の機能チェックを行う際には、WBC検査は非常に重要な検査となります。
また寿命を向かえた白血球細胞の破壊を行う臓器である「脾臓(ひぞう)の機能」をチェックする際にもこの検査は重要です。
白血球数の検査結果の数値は様々な症状の可能性を検討するひとつの指標となります。
人体内の血液中には多くの白血球が存在しております。
血液検査では、この血液中に存在する単位あたりの白血球数値の数を測定したり、赤血球や血小板などの成分との割合をチェックしていきます。
ではこの白血球はどこで作られているのでしょうか?
白血球の製造が行われているのは「骨髄」と呼ばれる組織です。
骨髄という言葉は一度は耳にしたことがありますよね。
しかしこの骨髄がどこにあるのかは意外と知られておりません。
この骨髄は、名称からもわかるとおり、骨の中心部に存在します。
基本的に全身の骨髄から血液は生成されることになりますが、骨髄は「加齢」とともに生成能力が低下し、骨によっても生成能力が大きく異なります。
主力となって血液の造血を行っているのは「脊椎骨」と「胸骨」、そして「肋骨」です。
脊髄が腰あたりにあるとイメージされている方が多いのは「脊椎骨」の造血能力が高いことに由来すると想定され間違いではありません。
人体の免疫システムは白血球だけではありませんが、白血球は最も主力となる免疫細胞です。
★ちょっとした風邪を引いてもなかなか治りづらい
★大きな病気にかかりやすくなった
このような自覚症状を感じている場合は、一般的には「歳をとったせいかな?」と加齢による原因を考えるものです。
自分ではよくわからないが体力が弱っているように体感するケースでは免疫細胞システムに異常を生じている可能性も検討しなくてはいけません。
白血球数は多すぎても問題ですが少ない場合は人体の免疫システムの問題ですから思わぬ合併症に進展するケースがあり注意が必要です。
最近どうも体力が落ちて風邪をひきやすくなったな…
そう感じている場合は一度、かかりつけの病院か専門の医療機関に相談してみると良いでしょう。
※自覚症状は体からの大切なサインです
白血球数検査値の一般的な正常値の範囲、基準値の範囲について見ていきましょう。
検査結果表には「WBC」と記載されている項目が白血球数の数値です。
掲載する数値の範囲は、一般的な検査値の基準値の指標です。
仮に基準値内であっても、他の疾患の可能性が存在するケースもありますので疾患の可能性がないという訳ではもちろんありません。
WBC血液検査を行う場合は、一度の採血で幾つかの血液検査を平行してチェックします。
白血球数はその日の体調によって数値が大きく変化します。
また個人差も大きいこともあり一概に基準範囲を想定することは現実的にはできません。
その為、各医療機関や検査を行う担当の医師、また被験者の状態などを考慮し適切な基準範囲を導きながら検査結果を診断していく形となります。
但し、以下の表から大きく逸脱して変化することはありませんので結果表をお持ちの場合は参照指標となるはずです。
単位は(個/μl)で示します。※μ=マイクロ(1ミリリットルの1000分の1の単位)
【白血球数の基準値の範囲一覧表】 | |
---|---|
数値の範囲 | 単位(個/μl) |
高値の範囲 | 10000以上 |
基準値の一般的範囲 | 3500~9800 |
低値の範囲 | 1000(1500)以下 |
白血球数などのように数値に大きな個人差がある検査。
また被験者の状況に合わせて診断基準を柔軟に変化し診断していく必要がある検査も多くあります。
例えば被験者の状況によって異なるケースには以下のようなケースがあります。
★喫煙者かどうか?
★妊娠しているかどうか?
★現在月経期間に該当しないか?
★持病はないか?
血液検査では、検査結果だけでなくこのような被験者の状況を加味して最終的に医師が診断を下します。
白血球数の検査を行う前に妊娠の有無の確認を行う事は前項でお話ししましたがなぜ妊娠の有無の確認を行うのでしょうか?
これは妊娠中の妊婦さんの場合、白血球数値が高い数値を示す傾向があるためです。
白血球数の基準値の範囲一覧表では10000以上は高い数値の範囲に分類されておりますが、妊婦さんの場合は「10000以上~12000程度」までの高値の白血球数を継続的に示すことがよくあります。
白血球数値があまりにも逸脱して高い場合は注意が必要ですが、妊婦の場合は他の疾患の可能性が検討されない限り産婦人科医からも特に心配が必要ない旨の説明を受けるはずです。
高い数値を示している原因が病気によるものなのか?それとも妊娠によるものなのか?この「検体検査の判断」は医師が診断します。
この医師の診断が伴う事から血液検査などの検体検査では「検体検査判断料」と呼ばれる検査費用が別途付加されているのですね。
※検査費用は検体検査実施費用+検体検査判断料がかかる
血液検査の結果、白血球の数値が基準値の範囲よりも高くなっている場合について見ていきましょう。
個人差がある為、数値が上昇していたとしても一概に疾患につなげることはできませんが、数値が高いケースでは、幾つかの疾患の可能性を検討します。
白血球数値が高い数値を示す場合は主に以下のような疾患の可能性を検討していくことになります。
【検査数値が高い場合の疾患の可能性一覧】
●尿毒症
●赤血球増加症
●急性出血
●急性溶血
●悪性腫瘍
●慢性骨髄性白血病
また病気ではありませんが、妊娠中の妊婦さんは前述した通り白血球数値が10000~12000以上の高い数値を継続的に示すこともあります。
検査結果が高い場合は不安にはなりますが、一度検査当日の状況を思い浮かべて見ましょう。
白血球数が上昇する要因には実に様々な要因が存在します。
特に疾患との関連性をもたずに検査結果に影響を与えるケースとしては以下のようなケースが該当します。
疾患との関連性がないが数値の上昇をもたらすケース
●過度のストレス
●激しい運動の直後
●喫煙
以上のようなケースでは白血球数値が上昇することが確認されております。
ストレスは日常的にかかっているものですが、検査当日数日前から過度なストレスを受ける環境にあった場合は数値の上昇を招く可能性があります。
また激しい運動の直後も白血球が増加しますし、喫煙者の白血球比率が高いことも明かです。
喫煙者、特にヘビースモーカーの方の場合は白血球数値が高い数値を示すケースが多くあります。
被喫煙者と比較すると喫煙者(ヘビースモーカーの場合)の白血球数は「約25%~30%程度」白血球数が高い傾向にあることも確認されております。
その為、WBC血液検査を行う際は、事前に喫煙の有無を確認されます。
白血球は人体に不可欠な免疫細胞ですが増えすぎても問題です。
禁煙ブーム・圧倒的な増税も実施された今、喫煙にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
※喫煙者の白血球数は被喫煙者よりも約25%~30%程度平均的に高い数値を示す
血液検査の結果、白血球の数値が基準値の範囲よりも低くなっている場合のケースについて見ていきましょう。
このように白血球検査値の数値が基準値よりも減少しているケースでは、白血球の最大の働きとも言える「免疫機能の低下現象」をもたらすので、人体に侵入してくる様々な細菌やウイルスなどの感染症にかかりやすくなります。
これはかなり大きな問題です。
免疫システムが低下している原因がいったい何によるものなのか?をつきとめ早急に治療を開始することが大切です。
尚、数値の低下が見られるケースでの主な原因としては白血球を造血している骨髄性疾患の可能性が検討されます。
白血球数値が減少している場合は前項でも解説したとおりその原因となる疾患を見極めることが何よりも大切です。
このまま数値が低い状態が続くような場合は以下に示すような疾患を発症するリスクも高まってくる為です。
低下状態を示す際に発症リスクのある疾患一覧
●白血球減少症
●インフルエンザ感染
●再生不良性貧血
●脾臓の機能亢進
●急性白血病
●骨髄異形成症候群
●悪性貧血
●全身性エリテマトーデス
免疫機能の低下は、ありとあらゆる疾患を発症する要因ともなるので注意が必要です。
白血球減少症とは、基準値の範囲表でチェックした基準範囲よりやや低い3000(個/μl)以下の数値を示す状態の総称です。
具体的な病名という訳ではなく、白血球数の個数が1マイクロリットルあたり3000個以下になった場合に白血球減少症と診断されます。
特に細菌を捕食する免疫細胞の主力部隊とも言える「好中球」が低下している場合は細菌感染を引き起こす可能性がある為注意が必要です。
白血球減少症の場合は分画をチェックし、どの成分が不足しているのか?を確認することで原因を突き止めていくのが通常です。
多くの要因として考えられるのはやはり骨髄の造血機能の低下。
もしくは白血球を死滅させる働きを持つ脾臓の機能が過剰に働いているなどの可能性が検討されます。
※白血球減少症=白血球数の個数が1マイクロリットルあたり3000個以下