心臓は心筋と呼ばれる大きな筋肉の塊で構成されております。
普通筋肉と言えば、上腕の力こぶに代表されるように、腕に力を入れて曲げていくという動作が行われます。
この際、腕を曲げようと意識して腕を動かしていますね。
しかし、心臓の筋肉は意識を必要とせずに、産まれた瞬間から寿命を迎える瞬間まで常時休むことなく動き続けております。
このように意識を必要とせずに動く筋肉群を「不随意筋(ふずいいきん)」と呼びます。
不随意筋の代表は内臓組織にある筋肉の大半が対象です。
中でも心筋の働きは強く全身の筋肉や臓器に血液を規則正しく送り届けると言う重要な役目があります。
「では、この規則正しいポンプ運動はどのようにしてなされているのでしょうか?」
これは心臓が有能な洞結節と呼ばれるペースメーカを持っていることがその要因にあります。
洞結節は規則正しい電気信号を房室結節へ送り届け、房室結節はヒス束を通じて心室へ電気信号を伝達します。
この電信号を送る回路を「刺激伝導系」と呼びますが、房室ブロックでは、この刺激伝導系の「房室結節」または「ヒス束」に何らかの障害が生じ心室に上手に電気信号が伝達できない状態となっております。
その為、洞結節からの信号は発信されていても、心室は信号が受け取れ無い為に除脈を示すようになるのです。
房室ブロックの可能性がある場合や検査の結果、除脈性不整脈の疑いがあると診断された場合。
除脈性疾患は危険性のないものと、注意が必要なものがあるのでしっかりとした確認が必要です。
まず自分で確認できるセルフチェックを行ってみましょう。
以下の自覚症状を感じたことがないかチェックしてみて下さい。
~房室ブロックの自覚症状の特徴~
★非常に強い倦怠感を感じる
★軽い運動(階段をゆっくり登るなど)でも息切れが生じる
★頻繁にめまいを生じる
★数秒程度の無意識に近い状態が1日何度もある
上記の自覚症状を感じたことがある場合は、刺激伝導系に何らかの障害が生じている可能性が検討されます。
房室ブロックを発症すると、まず脈拍の数値が40以下、時に30以下にまで脈拍が落ち込むことがあります。
これは刺激伝導系からの電気信号がほぼ途切れている状態で、心室が自立的に活動している際に示す脈拍数値の典型的なパターンです。
※脈拍数が30~40程度の除脈を示す場合は要注意
房室ブロックによって脈拍数が低下してくると、最終的には心停止をおこします。
長期的に除脈が続き、自覚症状も重い場合は、ペースメーカを使い、心臓の拍動をコントロールする必要性が出てくることになります。
アダムス・ストークス症候群とは心臓の拍動に何らかの障害が生じることによって発症する疾患の事を指します。
心臓組織や心筋の活動に障害を生じ脳への血流が減少すると、めまいや立ちくらみといった症状を及ぼし、最終的に失神に至ります。
房室ブロックはこのアダムス・ストークス症候群を引き起こす最も可能性の高い疾患として位置づけられております。
その為以前は房室ブロックによって脳への血流が低下し失神する障害をアダムスストークス症候群と呼んでおりましたが、現在では除脈・頻脈を問わず心拍数量の低下が原因となり意識障害や失神に至るものを全てアダムス・ストークス症候群と位置づけております。
尚、この疾患は心停止を起こす可能性もある為、疑いや一度でも発症経験がある場合はペースメーカの使用を即検討していかなくてはいけません。
※ポイントのまとめ
★洞結節からの電気信号が心室へ伝わらない疾患が房室ブロックである
★房室ブロックの自覚症状には特徴がある
★脈拍数が30~40程度の除脈を示すと要注意
★アダムス・ストークス症候群と房室ブロックは関連性が高い