関節リウマチとは、自己免疫疾患のひとつと考えられており、関節の炎症や変形をもたらす発症確立の比較的高い疾患のひとつです。
自己免疫疾患とは、自分の体内に進入してくるウイルスや細菌を捕食し体を守る為のシステムである免疫システムに何らかの異常が生じて自分自身の細胞や臓器を傷つけてしまう疾患の総称です。
※関節リウマチは自己免疫性疾患のひとつ
免疫システムの代表としては「白血球」や「リンパ球」が有名です。
白血球やリンパは本来自分の体を傷つけるようなことはありませんが、何らかのトラブルによって自分の体内の元気な細胞を攻撃してしまうのです。
関節リウマチは手や足、膝など関節部分に炎症症状を発症し基本的にゆっくりと着実に進行していく進行性疾患です。
痛みも徐々に高まる傾向にあり、早期発見が遅れてしまうケースが多いのも、この関節リウマチ疾患の特徴でもあります。
関節リウマチは徐々に少しずつ症状が重くなる傾向をもつ進行性の病気とされております。
治療は早期に行えば行うほど効果が高い為、リウマチの治療ではこの早期発見が非常に大切です。
関節リウマチの診断基準(次項)の項目でも解説しておりますが、診断基準の目安となる幾つかの自覚症状がありますので、可能性のある方は次項を確認して下さい。
尚、発症原因に関しては明確にされていない点も多くありますが、「リウマチ因子」「喫煙」などが関与していることが少しずつ解明されてきております。
⇒リウマチ因子(IgG)の解説はこちら
関節リウマチかどうかの診断は前項でも解説したとおり、「CRP検査(C反応性蛋白)」や「赤血球沈降速度(赤沈)」など炎症反応の指標となる複数の血液検査の検査を重ねながら慎重に診断を下していきます。
ここでは、このような血液検査の他にも幾つかの自覚症状を元に病気の可能性を診断するアメリカのリウマチ学会が公表している診断基準がありますのでチェックしておきましょう。
関節リウマチかどうかの診断は複数の検査を重ねながら慎重に診断を下していきます。
ここではアメリカのリウマチ学会が公表している診断基準がありますのでチェックしておきましょう。
関節リウマチの診断基準の代表的な項目には以下のような基準があります。
●朝起きた時の関節のこわばり(最も多い症状)
●少なくとも3つ以上の関節に炎症が確認される(多関節炎)
●手首や指の関節に腫れが確認される
●レントゲン検査による関節異常の所見が確認される
●リウマチ結節の確認(しこりなど)
●左右対称の関節に腫れが確認される
●血圧検査によってリウマトイド因子が陽性反応を示す
以上の診断ポイントのうち、四つ以上の症状が確認される場合、関節リウマチと診断されます。
①朝起きた時の関節のこわばり
関節リウマチの代表的な初期症状のひとつ。指のこわばり感・つっぱり感・痛みが自覚症状として確認されるかどうかがポイント。
②少なくとも3つ以上の関節に炎症が確認される
関節リウマチでは複数の関節で炎症を発症する傾向にある。手の指の場合は複数の指の関節(指の付け根から変形を伴うケースも多い)、手首、膝など多関節炎を生じているかどうかがポイント。
③手首や指の関節に腫れが確認される
①の指のこわばり感だけでなく、目視で腫れが確認できる状態になっている。もしくは赤く盛り上がっている。などの症状が目視で確認できるかどうかがポイント。
④レントゲン検査による関節異常の所見が確認される
レントゲン検査によって対象となる関節に変形性を伴う所見が確認されるかどうかがポイント。
⑤リウマチ結節の確認
関節リウマチの特長とも言えるこぶ状のしこりが確認されるかどうかがポイント。
⑥左右対称の関節に腫れが確認される
どちらか一方のみの関節に炎症を発症している場合は関節リウマチなどの自己免疫性疾患ではなく、使いすぎによる疲労性炎症や腱鞘炎などの可能性が高い。
⑦血液検査によってリウマトイド因子が陽性反応を示す
関節リウマチ患者の8割以上は陽性反応を示す為、リウマチ因子(リウマトイド因子)の定性は既に関節リウマチを発症しているかどうかの可能性を検討する際のひとつの指標となる。
前項の関節リウマチの診断項目のうち、四つ以上の症状が確認される場合。
この場合は関節リウマチの可能性が高いと診断されます。
※原則4つ以上の項目で該当するケースでは関節リウマチと診断
実際の診断ではもちろん複数の検査などによって総合的に診断を下していくことになりますが、朝の指のこわばりや、手首や指関節の腫れなどは関節リウマチの代表的な初期症状のひとつです。
指のこわばりに関しては類似する症状として指関節の腱鞘炎(ばね指)がありますが、ばね指の場合は指の付け根の関節(MP関節)に炎症による腫れが見られるという独特の特徴がある為、関節リウマチの症状の特徴でもある「他関節炎」や「結節」の有無など他の項目と照らし合わせて診断を下していく流れとなります。
関節リウマチは世界的にも全人口割合に対して比較的発症率の高い疾患です。
関節リウマチは男性・女性ともに発症する疾患ではありますが、男女比が明らかに確認されており女性の発症率は男性の約3~4倍程度にも上ります。
また発症年齢及び年代別で見ると圧倒的に50代に多く「40代~60代」の年代が統計的に最も多い年齢層とされております。
※関節リウマチは40代~60代の女性に最も多く発症する傾向にある
関節リウマチの患者数の男女比がここまで明らかである明確な理由はまだ証明されておりません。
女性は関節リウマチに限らず自己免疫性疾患の発症確率が高い傾向にあることから、「女性ホルモン」が何らかの影響を及ぼしている可能性が検討されております。
妊娠・出産に伴う免疫システムの変化などが体調やシステムそのものに何らかの影響を与えている可能性など様々な見解がありますがどれも立証されている訳ではなく、今後のひとつの課題であり関節リウマチの治療法に大きな変革をもたらすポイントとなってくるのかもしれません。
関節リウマチは日本に限らず世界的に発症確率の比較的高い病気として認識されております。
関節リウマチは世界的には全人口の約1%程度(老若男女すべて含めて)の高確率で発症している疾患である為です。」
医学・医療技術の進歩に伴い、様々な治療法や医薬品が開発され、関節リウマチの治療は大きく変化してきましたが、現在も尚、医学的に完全に発症原因が解明されている訳ではありません。
その為今後の医学の更なる進展によってより効果的な治療法が開発される事が期待されております。
関節リウマチで最も注意したいポイントがこの合併症の危険性です。
関節リウマチ患者の多くは、症状の進行に伴って合併症の危険性が高まる点を把握しておかなくてはいけません。
関節リウマチの合併症として確認されている主な病気には以下のような疾患があります。
【関節リウマチの主な合併症】
●シェーグレン症候群
●皮下結節
●心膜症
●胸膜炎
●肺線維症
●上強膜症
●末梢神経症
以上のように主に炎症性の疾患が合併症の多くを占めます。
リウマチの発見が遅れた患者のケースでは既に合併症を発症している患者も多く、このようなケースでは双方の疾患に対する治療を行わなくてはいけません。
シェーグレン症候群とは、口腔内の乾燥症状や眼球の乾燥症状を特徴とする自己免疫性疾患のひとつとして知られております。
シェーグレン症候群は、「中年以降の女性」に特に多く発症する傾向をもつ疾患で、医学的に「明確な治療法」は確立されておらず、現在も研究段階の疾患であると言えます。
⇒シェーグレン症候群の解説はこちら
シェーグレン症候群は、関節リウマチの合併症として、実に約20パーセント程度というかなりの高確率で合併症を発症しているという報告もあがっております。
関節リウマチ患者としては、確実に把握しておくべき疾患と言えるでしょう。
関節リウマチの最新治療薬として注目を集めている医薬品のひとつに「アクテムラ」と呼ばれる医薬品があります。
アクテムラはもともとキャッスルマン病の治療薬として開発されましたが、2008年4月16日に厚生労働省はアクテムラの幅広い薬品効果を考慮し関節リウマチの治療薬として追加認証しております。
但し、アクテムラは追加認証から数年が経過した現在であっても複数の副作用症状」が報告されるなど様々な未知の課題を抱えている医薬品であるとも言えます。
関節リウマチの治療薬として非常に高い効果を持つことから大きな期待がかけられている事もあり、今後の更なる研究・開発に期待が集まっております。
関節リウマチの主な治療の目的は、炎症を発症している関節に発生する痛みなどの自覚症状の緩和だけではなく「関節破壊を抑止する」という大きな目的があります。
関節リウマチは、症状の進行に伴って関節を破壊していく点が大きな問題点です。
この関節リウマチの関節破壊を促進する体内物質に
●TNFα(ティーエヌエフ・アルファ)
と呼ばれる成分があります。
関節リウマチ患者の治療では、前項で解説したとおり、関節の炎症を進める体内物質である「TNFアルファ」の働きを抑制する事が重要です。
この「TNFアルファ」に対し強い効果を発揮する薬剤に「レミケード」と呼ばれる医薬品が開発されております。
レミケードは、TNFの働きの抑制のみならず、TNFを生成する細胞そのものを破壊する作用をもちます。
この作用によって、関節破壊を要因から除去できる可能性が非常に高くなったのです。
リウマチ治療薬として期待の大きなレミケードではありますが、このレミケードは価格が非常に高額である点が大きな問題となっております。
しかし、レミケードには様々な医療費の公的制度があり、個人の負担が極力軽減されるようになっております。
※医療費助成制度により個人負担は軽減される
また、以下の認定を受けている場合は自己負担の軽減措置が図られております。
●悪性関節リウマチの認定を受けている
●若年性関節リウマチの認定を受けている
●1級2級の障害者手帳を持っている
●生活保護を受けている世帯
以上のケースに当てはまる場合は、軽減措置の適用をしっかり受ける為にも、担当の医師に事前に必ず申告しましょう。